Young the Giant/ヤング・ザ・ジャイアント

Posted by ジャンヌ(Mami Takayama) on 03.2017 音楽・ミュージシャン・撮影話
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Young the Giant @Huntington Park Pavilion on Sept. 9th, 2017 ヤング・ザ・ジャイアント

ドラマ「グリー」に使われた曲「Cough Syrup」で一躍世界的に有名になったロックバンド、ヤング・ザ・ジャイアント。

3週間前の9月9日にシカゴの野外ステージ、ハンティングトンパークパビリオンでのコンサート。
アメリカで30,000人が入る会場でコンサートができるというのは、かなり成功している、ビッグネームと言って良い。

この日の撮影は、滅多にない幸運であるが、バックステージにも入るパスをゲットできた。

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前座バンド終了で、ステージセット入れ替え中。
ベニュー(日本でいうライブハウス)だと、セッティングはミュージシャン自らやるのが当然だし、手伝うのはその店のサウンドエンジニア1人とか2人。
「ツアー中の大きなバンドはさすが違うなあ」と感じるのは、裏で働くスタッフの数。機材を運ぶトランクの大きさ。スタッフたちの手際の良さ。そして大きなトレーラーや移動バスの数や豪華さ。
それから、明らかにスタッフではない女の子たち。。。。スターに群がる男友達もいる。それと、ミュージシャンたちに挨拶にしにくる別のバンドのメンバーたち。これも豪華。


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メンバーとスタッフが円陣組んで、これからGO!ってところ。
私はそろそろフォトピットに向かわなきゃ、ってところ。

このバンドメンバーたち、売れっ子なのにかなり感じのよい気さくな若者たちでして。
始まる前に、バックステージにいる私ともう一人のベテランフォトグラファーにきちんと握手を求めて挨拶に来てくれた。
私は、彼らの売れた曲しか耳にしたことなかったし、私ももうひとりのベテランフォトグラファーも、バンド名は知っていてもメンバーたちの各々の名前を知らなかったりする(笑)  
これでいいんです。音楽ライターではないので、我々の仕事はベストを尽くしていい写真を撮ること。それのみです。名前は後で調べればいい。
ロックのフォトピットにいるフォトグラファーたちの半分って、バンドのファンというパパラッチ的なのことがほとんんどだったりする。いい写真は撮れないけれど、彼らの愛情とパッションは人一倍、みたいな。 いえいえいえ、パッションは大事だけれど、いい写真を撮れなければフォトピットに入る意味はない。 職人みたいな真剣なフォトグラファーたちも、アーティスト側も、実はこのパパラッチ的な自称メディア人に困っていたりする。


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一般にロックコンサートのフォトグラファーは、セキュリティの入るフォトピットにて最初の3曲を撮影できるパスをもらえるのが普通。
「たった3曲なんて」と思うフベテランォトグラファーも多いが、それでも大勢のこれらのファンの人たちが$50や$100や(アメリカのコンサートチケットやカバーチャージは、日本の1/4から半額)時に$300以上のチケット代を払って観に来ることを考えると、タダで入れてもらってミュージシャンの前の特等席で彼らを撮影できる立場はかなり特権だということを忘れてはいけないと思う。

大きなロックコンサートと、ジャズやブルースのコンサートの違いは、まずは、ミュージシャンたちへの壁の違いだと言える。
ジャズやブルースのコンサートは何万人単位の会場でやることはまずないし、ビッグネームで数千人、だいたい数百人から500人程度のベニューでやるのが一般。ベニューの規模の違いもあるが、観客とミュージシャンの距離は近いし、セットの合間にミュージシャンたちは気軽に観客と話したりもする。
フォトグラファーとミュージシャンの関係も同じである。


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売れたロックミュージシャンのコンサートになると、レコード会社もメジャーになってプロダクションも大きくなるし、メディアへの露出度が違ってくる。
熱狂的なファンたちも多くなり、ビッグネームにただ近づこうとするパパラッチの数も大きくなる。したがってセキュリティも厳しくなる。
スタッフの数もタイトルも多くなり、ミュージシャンへたどり着くまでの壁がいくつもできる。壁の数は、スターになっていくたびに増えていく。
ビッグネームを撮影しようとするありとあらゆるフォトグラファーも増える。ピットに入れるフォトグラファーの数は制限があるので、ベテランだって毎回パスをゲットできるわけではない。
私のように経験の少ない者は、そこが難関。売れっ子バンドのエージェントは、フォトグラファーの写真の良し悪しでなく、過去の経験、スタッフとフォトグラファーの付き合いの長さによって決まってしまうのがほとんどなので、そこに入り込むのは至難の技なのだ。

ただ諦めずに打診すれば、中にはきちんと写真の良し悪しで評価してくれるマネージャーや担当者もいてくれる。こういうところって、アーティストもスタッフも自分の著名度にあぐらをかかない人たちだなあ、って思ったりする。
結局は人と人なので。繋がりは小さな積み重ね。今はどこでもフリーパスのベテランフォトグラファーだって、最初は手探りで自分なりの道を切り開いていった。
コンサートフォトグラファーって、試験にパスしてライセンスを取るとか、合格したらタイトルもらえるとかそんな世界と正反対なので、ハウツー本もなければ雛形もない。
フォトピットにいるプロ達は、皆全然違うバックグラウンドを持っているし(私もかなりオリジナリティがある笑)、各人がそれぞれの道程を歩んできてここにいるわけだ。そんな人たちの「アドバイス」が、他の人の役に立たないのは当たり前。


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このバンドのエージェントは懐のでかいマネージメントをしているところだったので、なんとマネージャーは私にオールアクセスのパスをくれたのである。
バックステージはもちろん、ステージの後ろやサイドにも行けるステージアクセス付き。これは普通、同行しているツアーフォトグラファーとかにしか出ないパスなので、かなり稀なこと。
しかも特別に、3曲だけでなく1時間半のステージ全部の撮影を許可してくれた。
どんなジャンルのミュージシャンもそうだが、ロッカーは特に、3曲以降が盛り上がる。それなのに最初の3曲しか撮影できないなんて、本当は馬鹿げた規則なのだ。それをここのマネージャーに説得したら納得してくれたのだ。たまには論理が通じることがある。
そんなわけで、他の15名くらいのフォトグラファーが3曲終わってピットから出て行った後、私と他2人のフォトグラファー計3人はじっくりと撮影ができた。

まあ、こんなことは、大きなコンサートで滅多にあることではないと記しておこう。どんなに腕が良くてもメジャーなパブリシティでも、向こうがダメといえばダメなのだ。規則は規則なので従うしかない。
だからこれは特例なので、記念にブログに記しておこうと思った(笑)。


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5、6年前に、1500人程度のホールでコンサートをしていたこのグループが、今は30000人の会場で、何台もの大きなトレーラーやバスを連ねてツアーするバンドになった。
その前はもっと小さなベニューでやっていただろう。

その逆もある。10年前に30000人コンサートをしていたバンドが、今は1500人ホールで観られることも。ファンの増減もレコードの売れ次第。バンドメンバーが変われば離れるファンもいる。
次々と新しいバンドやサウンドが生まれる中、何十年と一つのバンドが一定の数のファンをとどめておくのは至難である。
それをきちんとわかっているメンバーたちが集まっているバンドは、いつまでも生き残れるのかなあ、とも思う。
30000人会場でできるようになっても天狗にならず(若者にはすごく難しいことだと思うけれど)、また逆に、大きな会場でやっていた後に中規模会場でしかコンサートができなくなっても腐らずに(一度天狗になっちゃった人はこれはプライドが許さない)音楽を続けられること。
ミュージシャンにとっての本当の成功って、コンサート規模の大小ではなく、この業界で長〜いキャリアを築いていくことだと思う。長くて細い成功ってなかなか難しい。

気さくなヤング・ザ・ジャイアントのメンバーたち。彼らは全然浮ついた感じしませんでした。
たまたまメジャーになってしまったけれど、そうでなくてもきちんと音楽やっていける人たちかと。伝えたいメッセージがはっきりしているからね。彼らの歌を聴くとよくわかる。
ボーカルのサミア、すごく上手い。とってもいいショーでした。
5年くらい前に超流行っていた「カフシロップ(コフシロップ)」(曲名)、よく聴いてましたよ。まさかあなた達に会えるとはね。
彼らの代表曲なので、観客大盛り上がりでした、さすが。


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「ザ・ルーツ」撮影の最後の一枚

Posted by ジャンヌ(Mami Takayama) on 28.2017 音楽・ミュージシャン・撮影話
The Roots
The Roots at Huntington Park Pavilion in Chicago  ザ・ルーツ


ミュージシャンの中でも、ロックコンサートの撮影は特別だ。
ロッカーは他のミュージシャンたちとなにが違うかと言うと、とにかく動き回る(中にはじーっとしたのもいるけれど稀)。
ボーカルも体全体使って歌うし走り回るし、ベースもギターも自由奔放だ。位置から外れないのはドラムくらいだ。
メンバーも一人を追うなら簡単だが、4人や5人の動き回る人たちをそれぞれに追いかけ、各々がパーフェクトにいい動きをしている瞬間を同時に収めることの至難の技。
ボーカルは完璧だがギターがぶれているとか、ベースが下を向いちゃった、とか、なかなかベストを出すのは大変だ。

ロッカーたちの動きは全く読めない。撮影前にYoutubeで彼らのライブ光景を予習はしていくが、いくら同じ歌でも同じ動きをするわけでないし、ステージもライトも毎回違う。行って見なきゃわからない。でも、ボーカルの魅力はこことか、カッコ良く見える角度とか、事前に調査しておくに越したことはない、なぜなら、現在のロックコンサートの撮影には時間制限があるから(後述)。
毎回なにが起こるかわからないから楽しいんだけど。このロック撮影の楽しさは、ジャズやブルースにはない。ロック撮影の楽しさは、大変さ、忙しさでもある。終わるとヘトヘトになる。

夏に撮影したザ・ルーツ。屋外のパビリオン。このバンド撮影は2回目だ。
大物バンドたちはほとんどなのだが、フォトグラファーの撮影許可は最初の3曲という制約がある。
1曲5分として、たったの15分。多くて15分しか撮影時間を与えられない。人気バンドだと数十人のフォトグラファーたちがピットに集まるので場所取りも大変だ。お互いにぶつかってカメラを壊さないように、逞しさと同時に落ち着きも必要だ。

全てのミュージシャンに言えるが、いい動きや表情をするのは3曲め以降だ。特にロッカーたちは、最初の3曲なんてウォーミングアップで、跳ねたり飛んだりが多くなるのは中盤から終盤。これを撮れないのは非常に残念。。。。だが、全てのフォトグラファーに対して公平なのだから仕方ない。

この日、私は賭けてみた。
フォトピットに入ると、3曲が終わるとセキュリティからフォトグラファーは追い出される。ピットを出たら、大混雑の観客の間にカメラを持って再びわけ入っていくのは無理である。だから、フォトグラファーたちは普通、3曲撮影するとすぐ帰る。すぐ編集しなきゃならないし、忙しいフォトグラファーはコンサートも掛け持ちなので、次の会場に向かったりする。
私はこの日、フォトピットに入らず、フェンスの外の一番前にカメラを持って、観客たちと並んだ。両隣後ろと人混みで押されているので、ピットのように動くことはできないし、一箇所から撮るしかない。だが、狭いピットなのでフェンスの後ろからでも私のレンズで十分撮れる。

これが大正解だった。3曲終わってピットから出て行くフォトグラファーたちを見送り、私はフェンス後ろから動かず。
バンドメンバーたちは、ここから激しい動きを繰り返す。
皮肉なことに、ピットのフォトグラファーたちよりも、私の方がずっといいいのが撮れた。3曲撮影制限のバカバカしさを物語る。

そして最後の曲。
ギターのキャプテンカークダグラスが、ドラムのいる高い台に乗った。
わ、うそ、次は飛び降りるぞ!!シャッターチャンスがやってくる、胸がドキドキする。。。
その間も撮り続けていると、シャッター押せなくなった。なんと!メモリーカードがフルに!!(悲劇)。
新しいカードを入れ替えている暇はない。私は急いで撮影済みの1枚の画像をなんでもいいからテキトーに消し、そしてこの最後の1枚を慌てて撮った。
宙に浮くキャプテンカークダグラス。 撮れた時は胸をなでおろした。

人に押されて動きにくかったけれど、ピットに入らずよかったー、と思えた夜であった。

ちなみに、小さめのベニュー(ライブハウス)で行われるライブは撮影制限はほとんどない。
例外を除き、だいたいフルショー撮影可。
撮影制限がないと結局1時間や1時間半のショー全部、あるいは2セット居座ったりして、これも結構疲れるのである。
激しいロックの3曲オンリー超集中のフォトグラファーたちが争う戦場ピットでエネルギー使うのと、時々休み入れながら1時間半撮り続けるのと、まあどっちも同じような疲れになるのである、結局は(笑)


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ミュージシャン撮影のきっかけ

Posted by ジャンヌ(Mami Takayama) on 28.2017 音楽・ミュージシャン・撮影話
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Donny McCaslin/ドニー・マッカスリン(ダニーマッキャスリン)2017 Chicago Jazz Festival
デビッド・ボウイの遺作『★』(ブラックスター)に参加しているサクソフォニスト。


ミュージシャンを撮り始めたのは、思えば8年前のブルースフェス。
周りのフォトグラファーから「もう君とは15年くらい一緒にやってるよね」と言われるけど、そんなにやってません(キッパリ)

人物を撮るようになったきっかけは、とあるお世話になったスポーツライターさんに「フィギュアスケーターの取材で撮影同行願いたい」との申し入れ。「人物撮ったことないんで無理かと思います」と言うと、「写真拝見しております。あんなに綺麗な花が撮れるんだから、大丈夫ですよ!」。。。
ええっ! 「あのー。。。花と人物は全然違いますが。。。」と言ってもわかってもらえない。
それでも撮影に行った。初めてなことを経験するのは、未経験の心配を超えてワクワクする。私の人物撮影の初仕事は、その2年後のオリンピックで金メダリに輝いたエバン・ライサチェック。

こんなこともあるから、人物写真の腕を磨いておかないといけない。。。と始めた撮影対象がミュージシャンであったのだ。
シカゴにいるのならブルースでしょ。。。。と、撮影とは関係なく、シカゴに越してきてからブルースフェスへは足を運んでいた。大きなカメラを何台もぶら下げて、ステージからステージへ動き回るフォトグラファーたちを端から見ていて、「大変そうだけど面白そうだな」とは漠然とは思っていた。
きっかけはなんであるかわからない。ブルースから始まりジャズ。。。そしてロック。。。。ジャンルを超えて色々と。
そのままズブズブと足を踏み入れたのだった。

面白くなければ続かないし、簡単に達成できることもつまらない。
奥が深いし、学ぶことが多いから超面白いのである。


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Chicago Jazz & Blues: A Photographer's View

Posted by ジャンヌ(Mami Takayama) on 28.2017 写真関係お知らせ
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シカゴ大学のアートセンターで開かれる、「Chicago Jazz & Blues: A Photographer's View」(シカゴ ジャズ&ブルース:写真家たちの目線)という展覧会に、私のブルース写真1点が選ばれました。
他の写真家の作品数十点とともに展示されます。9月22日から12月8日までの間、シカゴ大ローガンセンターにて開催。

このモノクロ作品は、去年のブルースフェスで撮影したギタリストのジョン・プライマー。

この展覧会のことも知らず、こういうのに応募することも面倒なたちなのですが、友人に「出せ」と勧められ、今年初めての応募。
今年のジャズフェスの時に、周囲のベテランフォトグラファーたちも多数応募しているのを耳にした。「なんだー、みんな知ってるんだー、こんなベテランたちが応募してるんだったら私なんて無理だろうなー」って思っていたら選ばれたというのでとても光栄であります。

ミュージシャンを撮影しているフォトグラファーたちはみな、その道何十年というベテランたちばかり。
8年前にブルースフェス、ジャズフェスを撮影し始めた私は、当時は場違いな場所に来たようなそんな感じもした。みんな男性で女性は私だけだったし、いかつい人も多いし、高価なカメラを両脇に下げて、レンズも何本も持っていて、いかにもプロフェッショナル。
そんな中でよくも毎年図々しく私も撮り続けたなあ、と。ま、私の中では、「写真の出来はカメラの良し悪しでない」という信念があったからなのだが。本格的なカメラを買う前に、自分の腕試しをずっとしていた。
そんな私のことを、フォトグラファーたちが皆とても親切によくしてくれ、フェスティバルのフォトピットの雰囲気がよかったから、というのも、長年続けてこられた要素として大きい。

その中でも、ポール・ナトキンという大御所(彼はローリングストーンズのツアーフォトグラファー3回、ビーチ・ボーイズのツアーフォトグラファーで日本にも来日、マイケルジャクソン、プリンス、ボブディラン。。。。世界レベルの大スターは漏れなく、地元のまだ無名のミュージシャンたちも撮り続けて来た人)が特に最初から話しかけてくれてよくしてくれた。こんなところに、日本人女性が珍しい、って思ってたのかもしれない(笑)。

「君のウェブサイト見たけれど、すごくいい写真撮るね。グレートフォトグラファーだよ」
本当にそうかなあ?と彼の言葉も半信半疑だった8年前。

それから彼にはよく食事に誘われ、一緒に撮影に行く仲にもなった。
「君も僕と才能は同じなんだよ。違いは、僕には経験の多さがあるだけ」
経験の多さ。。。。1977年から40年もこの道で撮り続けている人とは絶大な経験の差がある。ライブ撮影は、まず才能ありきに限るけれど、経験の多さがモノを言う。
ベニュー(ライブハウス)によって照明もステージもフロアも違い、それによって我々の撮影方法やレンズも違ってくる。大きなコンサート会場もそれなりに。フォトピットが用意されて撮りやすくはなるけれど、最初の3曲のみの撮影と制約がある場合がほとんどで、その限られた15分でいい写真を撮らないといけない。
ジャズ、ブルース、ロック。。。と、音楽ジャンルによってミュージシャンたちの動きも違うので、効果的な撮り方も違う。それはロジックでなくて、全て経験から学ばざるを得ない。

ミュージシャンを撮り始めて8年くらい。
この8年、私は本も出したくてそれに力を注いでいた時もあるし、他にも色々したいことがあって、ミュージシャン撮影のみを積極的にしていた年月ではなかった。
周囲の音楽フォトグラファーたちが、精力的にあちこちに足を運びミュージシャンたちにフォーカスして撮り続けている中、私はまだ色々と迷っていたのだと思う。そんな迷いもあったから、ジャズやブルース展覧会の写真展のことなども今まで頭になかったのだ。

「もう長年、たくさん撮って来たんだから、応募しなよ」という友人の言葉でなんとなく応募した展覧会。
フォトグラファーの著名度や経験値からでなく、シカゴ大の美術審査員が厳選な目で選んでくれた写真。
他のベテランフォトグラファーたちに混じって、シカゴのジャズ、ブルース界の歴史をフォトグラファーの目線で刻んでいける喜びの大きさを、撮り始めて今初めて感じていると思う。

そして今、ミュージシャンたちを撮ることをとても楽しいと感じている。
ライブ撮影はかなり楽しい。対象物に対するパッションがないと、いい写真は撮れない。
これからも積極的にミュージシャンを撮っていきたい次第。

あちこち色んなものに手を出してフラフラ定まらない私を、「君はグレートフォトグラファーなんだからさあ」と言い続けてくれたフォトグラファー友のポールたちにも感謝。
飽きっぽい私が、まだ写真をやっていることにも自分で驚きですが、たまたま出会えたシカゴの撮影環境と、やればやるほど深いこの世界をもっと見てみたくなった、という思いが大きいですね。


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BIG THIEF /ビッグシーフ

Posted by ジャンヌ(Mami Takayama) on 20.2017 音楽・ミュージシャン・撮影話
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去年2016年にデビューしたブルックリン出身のフォークロックバンド、ビッグシーフ。
先日、7月17日に撮影してきました。

個人的にとても好きなインディーロックバンド。
フロントウーマンのエイドリアン・レンカー描く自分の物語が深くて儚げで、彼女の壊れやすくも強さを秘めた歌声と共に、私の好きなタイプのローファイなインディーロックサウンド。
バンドのギターもドラムもとてもいい。


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デビューアルバム「Masterpiece」も素晴らしかったが、先月出た新アルバム「Capacity」は、これまたソングライティングに深みが増し、彼女の自分探求に拍車がかかったということか。

ビッグシーフを知らない人がいきなりステージを見たらきっと驚くだろう。
新アルバムPVのためか、頭を丸めたエイドリアンの髪の毛は多少生えたもののスーパーショートカット。もともとボーイッシュな顔立ちだが、ジーンズにフーディにスニーカーという格好で登場すると、「男4人のバンド」とまず思うだろう。
ところが彼女の歌声を聴くと心を奪われる。男性には出せない、とても可愛らしい、少女のような透き通る声なのだから。

エイドリアンは特にシャイなようで、派手なパフォーマンスもしないし、気の利いたトークもない。それなのに、1曲1曲ごとに客の心を虜にしていく。彼女の物語に耳を傾ける。心を打つ。


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まだ訪日していないようだし、日本では知られていないと思いますが、まずデビューアルバムのタイトルソングでもある「Masterpiece」を聴いてみるといい。
彼女のソフトな声と、荒れ狂うようなロックサウンド。ギターソロなんてめちゃくちゃカッコいい。


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素晴らしいデビューアルバムの後の今回の2作目「Capacity」。期待を裏切らない。豊かさが増している。
歌詞はもっと私的になっているが、十分に聴き手と共有できる形になっているところが素晴らしい。エイドリアンのソングライティングの確かさを証明している。
彼女の歌には固有名詞が多い。一体それは彼女の幼馴染なのか、友達なのか、家族なのかわからないのだが、歌詞の内容はとても深くて傷つきやすく、切ない。想像力を掻き立てられる。


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彼女はとても上手い語り手だと思う。物語が上手いので、それがどんなに抽象的でも、我々は何かを見いだすことができる。
ちょっとノスタルジックなサウンドは、いつの間にか聴き手の物語につながっている。。。。そんな音楽。


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「Capacity」はかなり深い歌が多いので、この曲が書かれた背景をついつい想像してしまう。聴き手自身が背負った過去の傷の上をぐるぐる回ったりするかもしれない。いい作品というのは、こういうことだけれどね。

ぜひこのアルバムの名曲「Mythological Beauty」ではイントロのドラムとギターからドキドキしてください。
5分半以上もある「Mary」の美しい歌詞に酔ってくださいませませ。


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絵を描くにも文章を書くにも、作り手には吐き出さないといけない時間がある。それは過程の中でとても必要なことで、それを超えないといい作品に繋がらない。
このアルバム、エイドリアンの「吐き出し」がとても強く感じられる。吐き出しが単に自己愛や自己満足だけの人は、単に独りよがりで人と共有できる作品にはならないが、このアルバムはきちんと響くアートに完成されている。
とても才能のあるソングライターだと思う。

今後の活躍も楽しみだし、ぜひいつか日本にも行って欲しいです。


Adrianne Lenker


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