先生の結婚

Posted by ジャンヌ(Mami Takayama) on 27.2015 日々あれこれ
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ひょんなことから小学校時代の同級生が、井上靖氏の「わが一期一会」という本の一節を教えてくれた。
「先生の結婚」という章。

「なんだろう?」と思ってザーッと目を通すと、一気に蘇ってきた過去の記憶。
井上靖氏が、「日曜日に遊びにやってきた」という「9歳の孫娘」とは、我々の同級生である。彼女とは4年生の時に隣の席であった。
彼女が「おじいちゃん」である井上氏に話すトピックが、「A先生とB先生が結婚するかもしれない」という話。

うわっ!この男のB先生って、私が(きっとクラスの誰もが)好きだったT先生。そして女のA先生は、これまた優してく人気のあったF先生。
T先生とF先生は隣同士のクラスの担任。二人とも若くて(男のT先生は大学卒業したばかりで、当時23〜4歳。F先生の方が年上だった)、お似合いで、子供心に「この二人、いいんじゃないかな〜」って思ってて、隣のF先生が用事でうちのクラスにやってくると、皆大声をあげて冷やかした。そして、冷やかすと二人とも真っ赤な顔して照れるのを、我々はしっかり見ていた。
ひょっとして、ひょっとして、この二人は本当に好き合ってるのかも。結婚したりなんかして?そんな風に、子供心に思ったりもしたけれど、半分はやっぱり大人の世界はわからなかったのが本音。

井上氏の随筆によると、孫娘だったTちゃんは、近所のおまわりさんにも先生たちのことを話していたらしい(笑) おまわりさんも、先生たちが二人で電車に乗るのを見たことあるから、結婚するかもなあ、なんて話している。
そんな「孫娘」の話を、井上氏はとても微笑ましく描いている。

「子供たちが、”とてもいい先生”というA先生も、B先生も、本当にいい先生に違いない、と思った。そしてたくさんの幼い眼に見守られている二人の心の寄せ合い方は、幼いものたちが感じ取っているように愛情というものであろうと思う。そして、幼いものたちが大きい期待をもって見守っているように、二人の愛情は結婚という形に進展していくかもしれない。」

そうなんです、この二人の先生、学年が終わった後に、結婚するんです。
実は私にも、この二人の先生のロマンスには、忘れられない記憶がある。

二人が付き合ってるとか、半分冗談で子供たちが冷やかしていた頃、私の仲のよかった”よっちゃん”からこんな話を聞かされたのだ。
「昨日○○デパートに行ったら、T先生とF先生が、手をつないでエスカレーターに乗ってたの、見ちゃった」

ええーっ!! 結構衝撃的でした(笑)。 大人の恋って、大人の付き合いって、よくわからない子供だったから、言葉で「二人はできてるんだ〜」なんて冷やかしても、半分は子供の思い込み?みたいな気持ちもあったし。
それが、いきなり「手をつないでた」という表現で、学校の先生が生々しい大人に見えてきて、ショッキング〜!でしたね。当時まだ3年生でしたし。
でもなんでそのエピソードが記憶に残っているかというと、そのショッキングな内容ではなくて、よっちゃんの次の一言。
「でも、ママが『このことは、みんなに喋らないでいてあげようね。先生たち、騒がれるとかわいそうだから』って。だから、誰にも言っちゃダメだよ」と。
よっちゃんママも優しいし、担任の先生のデートを日曜日に目撃しちゃったよっちゃんも大人だし。私はだから、このことは誰にも言わなかった、親にさえも。
「エスカレーター、手つなぎデート」は聞かなかったことにして、残りの学期をシラーっとした顔で過ごしたのである。そして、先生たちから、ちゃんと自分の言葉で「報告」があるまで、待つことにしたのである(笑)。

子供って、えらいなあ(笑) 大好きな先生だったからね。
井上氏も書いているように、「たくさんの幼い眼に見守られていた」んですよ。「先生の結婚」は、きっと我々生徒たちの一人一人の心に、大きな出来事として残っているんじゃないかなあ。

実は、私の担任だったT先生は、すごくハンサムで歌がうまくて美声の持ち主だった。
若くてハンサムときたら、当時ほとんどが30代だった生徒の母親たちはファンになってしまうのは当然で、その熱気は子供達にも伝わってきましたね。授業参観だって、我が子目的じゃなくて、先生目的なんじゃないかと。

学年の最後に、T先生は父兄会で「結婚する」ことを報告したそうである。父兄たちは子供の噂話から、とっくにF先生のことなど知っていたはずなのだが、クラスの中の積極的なお母さんの一人が、「お相手はどなたなんです?」なんて詰め寄ったとか(冗談でだけど)。
先生が結婚してから、あれはなんでだったか忘れたけれど、うちの母が車でT先生の新婚家庭まで送って行ったことがあった。私も一緒だったので、すでに同じ小学校を離れてお腹の大きいF先生に久しぶりにお会いした。
先生たちの学校の姿とは違う「生活」を垣間見るのも、なんか子供心に新鮮というか、ショッキングな出来事でしたねえ。だって、隣のクラスの担任だった女の先生が、からかわれると赤い顔していた可愛い女の先生が、家にいてお茶とか出してくれるんですよー。妊婦さんで。

この本のことを教えてくれた同級生が、「うちは家庭訪問のとき、最後に回してもらって、夕食食べて帰ってもらったことある。」って。
ええーっ!! うちのママも「車で先生見送り」などやるやると思っていたけれど、彼のママもやるなあ。
ママパワー、恐るべし。T先生、モテすぎ。結婚相手が、「本当にいい先生」のF先生でよかったよかった。

先生たち、今どうしてらっしゃるのだろう。
我々子供たちがみーんなで見守った、「先生の結婚」でした。ああ、懐かしい。




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