目黒とんき

Posted by ジャンヌ(Mami Takayama) on 14.2011 東京・懐かしの店
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先日郊外に用事があったので、久しぶりに日系スーパーに寄った。
お昼時、ここのフードコートで日本食を食べようと目に入ったのがトンカツ定食。
思わずこれをオーダーしようと思ったのだが、過去の失敗を思い出した。
一度ここでトンカツを頼んで不味かったこと。
もう一度日本レストランで食べ直しても、やっぱり不味くてがっかりしたこと。

見本のトンカツに騙されず、夏らしくうな丼を食べた。

トンカツは、日本にいる頃から家では作らない。
絶対にトンカツ屋で食べるようにはうまくは揚がらないからである。
トンカツは美味しい店で食べるもの、と思っている。
そして、食べるのなら美味しい店でなくてはいけない。

東京のトンカツ屋で一番贔屓にしていたのは、目黒のとんき。
目黒駅前にも、他にも、暖簾分けした「とんき」という店があるが、本店はやっぱり全然違う。

目黒の裏を歩いて行くとある本店。
ここに最初に連れて行ってもらったのは大学生の頃。
ここのトンカツを食べてから、他のトンカツはしばらく食べられなくなってしまったほど。
トンカツ食べに、わざわざ目黒に行ったものだ。

トンカツの、ヒレとロース定食だけで勝負する店。
白木の長いカウンターのみ。
カウンターの中はオープンキッチン。
白い服着た職人さんたちが、分業でトンカツを作る。

トンカツ揚げる人、トンカツ切る人。
切る人の手は、揚げ物の熱さで白い手がピンクにいつも染まっている。

昔はキャベツを切る専門の男性がいたのだが、いつしかキャペツは機械に変わってしまったのが残念だ。

ご飯のお変わりは自由。キャベツも無くなると足してくれる。
このご飯係とキャベツ係は、東京では珍しいタイプの、田舎から出て来たばっかりといった感じの素朴な若い女の子たちなのだ。

そうやって見てみると、職人の男性も女の子たちも皆色が白い。
「皆、東北出身なのかなあ」なんて、友達と話したことがある。
スッピンの女の子たちは、ホッペもまっ赤なのだ。

白木のカウンターはいつも気持ちいいくらいに綺麗に整えられていて、店は質素で無駄な物が一つもないが、清潔感溢れている。
何よりも気持ちいいのは、やっぱりここで働く人たちの仕事ぶり。
美味しいトンカツを、さらに美味しくさせてくれる職人さんたちの姿。
こんな店も、こんな店作りも、他のトンカツ屋ではお目にかかったことがない。

若い女の子を抜かして職人さんたちは全て男性であるが、一人名物おばさんがいた。
オーダーをとるおばさんである。
三角巾を頭にした彼女は、入って来た客から注文を取る。
客が席についたらすぐに料理が運ばれて来るのも、この「入店したらすぐオーダー」制のおかげである。
店内はいつも混んでいるので、客たちは適当に店に入って並ぶ。
どんどんと開いているスペースに入って待つので、入って来た順番はどんどん崩れる。

ところが、このおばさんは決して、絶対に、客の順番を間違えない。
客がどこのスペースに入り込んで待とうが、「はい!次のヒレとロースのお客様!こちらへどうぞ!」と、きびきびと知らせてくれるのだ。
客の数はものすごい。客の名前も一切聞かないで、どうやって頭に入れているのか。

トンカツの美味しさは店のおじさんたちのおかげであるが、この店の威勢はおばさんがいなければ成り立たない。

最後にとんきのトンカツを食べてから、随分と月日が経つ。
職人さんたちは代が替わっているかもしれないなあ。
おばさんも元気だろうか。

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