ケアロ、イリノイ

Posted by ジャンヌ(Mami Takayama) on 26.2012 シカゴからの小旅行
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急に行きたくなった所があった。
Cairo,IL. イリノイ州の南端の町、ケアロ。
Cairoと書いてエジプトの街はカイロと言うが、この街はケイロと呼ばれる。だが、日本語表記は「ケアロ」のようなので、ここではケアロとする。
ちなみに、夫との2人旅行であるが、完全にここは私の趣味の場所である。
夫は、「なんでCairoに~???」と困った顔をしていた(ぷぷ)。

シカゴから約400マイル。
金曜日の夜中というのか、土曜日の早朝3時に出発した。
夫は「どうせボクは運転手でしょ」とか言っていたくせに、「なんだかとても眠いから運転して」ときた。
夜中の運転は私は好きではないが、真っ暗闇で風景も何も見えない中を3時間くらい運転した。さすがに私も寝ていないので眠たくなって来て、レストエリアで休憩。
だけどエンジンを切ると車内はすごく寒くて寝れたもんじゃない。
すぐに空が白けて来た。やっと見えた風景は、だだっ広い農地と白い農家。。。。。(上の写真)

「休んでても仕方ないから、前に進もう!」夫が前向きに言う。そうだ、まだ先が長いのだ。休んでいるヒマはない。今度は夫が運転。
風景が見えて来ると楽しくなるが、永遠に続くイリノイ州の田舎の光景はすぐに飽きが来る。。。

頑張って運転したおかげで、朝の10時過ぎにはケアロに到着!

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イリノイ州のケアロという町は、地理的にとても特徴がある。
町の西にミシシッピ川、東にオハイオ川があり、ケアロの町の南端で合流する。
ケアロの西側はミズーリ州、東側はケンタッキー州。
イリノイ、ミズーリ、ケンタッキーの3州が顔を合わせる所だ。
アメリカにこういう州の境は珍しくなくとも、ケアロが特徴的なのは、ケンタッキーとミズーリという奴隷州に挟まれた、自由州(イリノイ州)の町だったからだ。
そのために、ここはしばしば「自由の町」として象徴されるようになった歴史がある。

「ハックルベリーフィンの冒険」で、ハックと奴隷のジムはイカダでオハイオ川を下る。ジムはミズーリの奴隷州から自由を求めるために逃亡をする。ハックはジムの手助けとはいえ、自分も暴力を振るう父親から逃れるために逃亡する。
彼らの目的地が、このケアロでもある。

「トム・ソーヤー」だとか「ハックルベリー・フィン」だとかのマーク・トウェインの物語は、私の子供時代のバイブルでもある。
私が旅好きになったのはこの影響も大きいのだ。

ハックルベリーの物語の1840年代頃には「自由になれる町」の象徴だったケアロ。
そのせいか、元々白人の裕福な町であったケアロにどっと逃亡奴隷が押し寄せ、黒人人口が増えた。
そのため、人種間の摩擦が激しくなって20世紀に入ると黒人へのリンチも多発。
公民権運動の時代には、黒人の反発で暴動が多発。
100年で、「自由の町」は憎しみの町に変貌してしまったのだ。皮肉な町の行く末。



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しかし、皮肉なのは憎しみのぶつかり合いだけでは終わらなかったのだ。
暴動多発の1960年代後半から、かつての白人住人たちはケアロを離れ始めた。
1900年に人口15,000人あった町は、今や2000人に満たない。最近は、1年で800人位減少し続けているらしいので、完全なるゴーストタウンになるのはもう時間の問題なのかもしれない。



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町は「機能している」とは言いがたいが、まだ人は多少住んでいる。
でも、道を歩いている人に出会うのは滅多にない。



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かわいらしいモーテル。
かつては、ケアロに観光客が来ていた証拠。


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ドアに「OPEN」とあるけれど、廃墟である。
こんな場所がいくつもいくつも。



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ここは元家具屋さん。
どこもかしこもレトロな看板が残っている。
かなり歴史のある、しっかりした町だったことが伺えるのだ。
それだけに、今の姿が信じられない。


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ここにもモーテル。比較的新しい看板に見えるけれど、「Free TV」ってあるくらいだから、70年代だろう。
2010年代のモーテルだと、「Free wi-fi」となる。



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モーテルの部屋を覗くと、家具などがそのまんま残っている。
廃墟になった後は窃盗だのホームレスが住処にするなど荒れ放題、といった感じ。



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ここは元ファーストフード店。


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ドライブスルーのメニュー版。
チキンにキャットフィッシュ。黒人目当ての店。
ハンバーガーが$1.49って、田舎の店にしたら最近の値段だろう。
閉店して数年。。。といった感じか。
手書きのメニューを見る限り、フランチャイズ店でなかったことは確か。
というか、ケアロには一つもマクドナルドとかバーガーキングとかいうフランチャイズ店は存在しない。
とても小さな町である。



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廃墟となった教会。
こういう大きな建物はメインテナンスが必要(お金が必要)なので、メンバーが減ると維持不可能になる。
近くには、小さな建物の教会はいくつもあった。
店は無くても教会は多し。
特にこのような落胆の町の住民こそ、教会が全てという生活になる。



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建物は全部廃墟なのに、立派な教会がそびえ立つ(教会は生きている)。
町のこっち(私が写真を写している)側は黒人居住区。教会のある通りの向こう側が白人居住区。
この町も、人種の棲み分けがきっちり。アメリカの現実。



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「こういう所にいると落ち込んで来るよ~」と夫。
確かに、ゴーストタウンというのは見ていて楽しくなる所ではないけれど、町は生き物だなあ。。。という実感がすごく湧くので、私は惹き付けられるのだ。
ポンペイのように火山で一瞬にして無くなった町と違って、アメリカのゴーストタウンというのはほとんどが人が自ら去って行くことによって生じる。
一産業に頼った結果、その産業が衰退すると黄金時代からゴーストタウンにあっという間に変わってしまうのは、デトロイトに限ったことではない。

ケアロは、かつてオハイオ側とミシシッピ側に挟まれた貿易の中継地として栄えた町だった。
人は必ずここに泊まる。ここで飲む。食べる。大変賑やかな町だったのだ。
今や、ミシシッピ川を通る船などない。
自動車の時代となってからは、ケアロは必要とされなくなったのだ。
アメリカの町というのは、本当にその変貌が激しい。

ケアロ日記続きます♪


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