リトルイタリー物語/イタリアンサブ

Posted by ジャンヌ(Mami Takayama) on 29.2012 エスニックタウン
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シカゴのリトルイタリーには学生時代に住んでいたことがあるので、来るといつも懐かしい気分に。
表通りのイタリア系経営の店は徐々に減って来てはいるものの(かつてはもっと沢山あった)、裏通りに1930年代初頭から営業している古いイタリアデリがある。

この通りは学生時代は毎日通っていた。
もう20年以上も前のことだが、当時はもっと古くさい店構えだった。看板も古かったし、店内も暗くて恐らく1960年代から改装されてないだろうな、といった感じだった。その古臭さがいかにもイタリア人街らしくてよかったのだけれど。

どんなエスニックタウンもそうなのだけれど、ツーリスト相手に店を開いているわけではない(結果的にそのようになる場合もあるが)。
何世代も続けて知り合いの近所の人を相手にしているので、こういう店は「入りやすさ」に重点を置いて作られていない。
特にイタリア人街の店の場合、ドアは重厚な鉄製(倉庫のような)だったり(これは防犯面も含んでいる)、窓が小さい上に中が暗くてよく見えないので、どんな店なのかもよく分からない。常連客は分かりきっているので、それで問題無い、といった感じだ。

時代は流れ、世代交替もし、商売上これではまずいんじゃないかと思ったかどうかは確かじゃないが、ここ6~7年で随分と店が様変わり。

窓は大きくなり、ガラスドアになり、店内が見えるようにして入りやすくした。
マックにしてもスタバにしてもサブウェイにしても、フランチャイズ店がみな「大きなガラス窓」を持っているのはそのためで、通りがかりの人が「入りやすい」。これ商売面では重要。ノスタルジーを求める客にはポイント低いだろうが(笑)。




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学生時代からこの店に来ていなかったのだが、まだ存在することにビックリだ。それだけでも有り難い。
しかし店内はすっかり変わった。
デリのカウンターとかメニューとか全てが明るくなってキレイになっていた。




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しかし、サンドイッチの美味しさは変わらず。
昔は、店内ビッシリ食料品の棚が並んでいて、サンドイッチは売っているものの、中で食べるスペースはカウンターしかなかった。だからいつもテイクアウトしかしたことがなかった。
しかし改装後は、テーブルまで置いてあるのでイートインできる。

イタリアンサブと呼ばれる、フランスパンを使ったイタリアのサンドイッチ。
イタリア旅行中も、よくデリでサンドイッチを作ってもらって、眺めのいい場所に座って食べたりしたなあ。

中身はハムとプロシュートとプロボローネチーズのシンプルな、だけど一番美味しいと思うイタリアの味。
刻んだレタスとトマトをサービスで入れてくれる(無しの場合も値段は同じ)ところは、とてもアメリカ的。

これで一番小さいサイズの6インチ。
サイズは8、10、12、16インチとあり、一番大きいのは3フィート!(90cm以上)。
この3フィートの超ロングサブを作ってもらって、公園で数人でちぎって食べるのも美味しいのである。




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昔はところ狭しと食料品が並んでいたのだが、とても広いスペースで食料品はもうそんなに置いていない。
こういう店の多くは、近年ケータリング業に主なビジネスをシフト替えしている。
ホームパーティが盛んな国なので、子供の誕生日会があると「ミニサンドイッチ50個」とか「カノーリ3ダース」とかの注文が入る。アメリカではケータリングは結構大きなビジネスなのだ。ホストがキッチンに引きこもりで料理する、なんてことないですから。




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端にいる丸っこい人が店の主人。
混じりっけなしの、南部イタリア人そのもの、といった感じの人。
壁に飾ってあるモノクロ写真の女性は、彼のおばあちゃんだろう。1932年創業だと、1世か2世でそんな感じだろうな。


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この店の真向かいには別の店がある。
この店も古い。昔、手書き文字の看板がかかっていたのをよーく覚えている。毎日見てたから。
いつの間にか新しい看板に変わっていたよ。店も様変わり。

この向いの店の男性がやってきて、主人となんだかしばらく喋っていた。
お互いに窓腰に見てヒマそうだと行き来するのだろう。
アメリカにはイタリア系は多いが、観察していると、飲食系のファミリービジネスをしている人たちは特に、イタリア人の特徴が何世代にも渡ってすごく出る。
話している言葉は英語だが、身振り手振りのジェスチャーとか、動き方や歩き方まで、イタリア南部で見かけるイタリア人そのものなのね(笑)。
やはりコミュニティ内で、ファミリービジネス(親戚一同イタリアン)という環境は、濃いイタリアの血がなかなか薄まらないのだろうな。
食べている途中で親戚と思われるおばあちゃんまで孫を連れてやってきた。小切手もってきて、なにやら仕事の話。
そのおばあちゃんもエプロン付けてたから、ここで働いているのかな、と思ってたら、なんと向いの店で働いていた。
ひょっとしたら、ここと向いの店は親戚同士なのかもしれない。大いにあり得る。
こっちの店の息子と、向いの店の娘が結婚したのかもしれないし。。。。なんて想像してみる。
濃い。。。濃いよ。イタリアンコミュニティ。
一見、絆が弱まっているように見えるリトルイタリーも、濃いところは濃いのだ。



この店のすぐ近くの、学生時代に住んでいたアパートに行ってみた。
あるとは思っていたが、まだ健在の赤煉瓦ビル。


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外見は普通なのだが、このアパート中がオンボロなのだ。
オンボロなのだが、大学生相手なので家賃が安い点がメリット。そしてひっきりなしに借りてくれるから、家主は改装もしないでそのままなのである。
学生にとっては「安い」のが一番で、図書館で夜中まで勉強して寝るだけだから、住み心地とか家具とかにはこだわらない。

一般に賃貸アパートは、半年とか1年の最低期間が契約で、それ以内に引っ越すと違約金を取られる。
ところがこのアパートは、2ヶ月とか3ヶ月とかの短期契約もOKなので、「もっとマシな所を探すまでの間」といった留学生たちが「とりあえず」住むのだ。

しかも、一部屋に何人住んでも怒られない(笑)。普通のアパートはこういうのすごくうるさい。
そして家賃を、人数割りしてくれるのだ。例えば600ドルの部屋に3人で住むとなると、一人200ドル。普通ならば誰かが代表して600ドルをまとめて納めなければならないのが家賃であるが、一人200ドルずつ徴収してくれるので助かる。
だから、家賃払わないルームメイトがいてもこっちには迷惑こうむらないし、その人が追い出されても自分は大丈夫なのだ。
そういう利点は沢山あるのだが、古いアパートなのでしょっちゅう何かが壊れる。水道管から水漏れしたり、いろいろだ。
そのたびにルイージという名のイタリア系の家主のおじさんがやって来るのだが、これまたイタリアンタイムで動いてくれるのでなかなか直してくれなかったりする。
しかもルイージおじさん、英語をあまり喋れない。留学生の私の方が、最近アメリカに来たばかりの私の方がずっと英語上手いじゃん、といったくらいなのである。
ルイージおじさんとのコミュニケーションも大変だった。マジで「イタリア語を勉強しよう」と初めて思ったのはこのときである。

しかし憎めないおじさんだったなあ。ルイージ。
あの頃60歳~70歳くらいだったから、今はもういないかもしれない。




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このアパートに来てみて、感動したというか呆れたというか。
当時からすっごく古臭いドアだったのだが、20数年経った今も変わっていないじゃないか!!

木枠のガラスドアなんてオールドファッション~♪。。。なんて、ここに住んでいなければ撮影対象になるだろうが、住民にとっては大変なのね。
なんせ古い、隙間だらけのドアなので、厳寒のシカゴはマイナス数十℃の風がピューピュー建物内に入り込んで来る。日本にまだ残っている古い長屋もビックリな通気性(長屋に住んだことないが)。
私は階段上がってすぐの1階に住んでいたので、この冷気は部屋の温まり具合にも響くのであった。

それから、この表ドアの鍵をルイージはくれない。というか、多分鍵が壊れている(爆)。
だから、ドアはいつも開きっぱなし。誰でも入れる。
とある冬の日、ホームレスのおじさんがドアの中で寝ていて、またいでドアを開けたことが何度かあったよ。
今思うと、楽しいアパートだった(笑)。



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半年くらい住んだんだっけな。。。忘れてしまったけど、住んだ所って見ると思い出すことがあるね。
例えばこのドアノブ!
ドアが変わっていないのだから当たり前だが、この年代物のドアノブ、毎日開け閉めしたドアノブ!
鍵穴見てください(笑)
ここ、ヨーロッパじゃないんだから。こんな鍵、今作ってくれないと思います。。。。



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郵便ポストも変わっていない。
しょっちゅう住居人が変わるので、表札はとりあえず紙でペタ。私もそうしてたなあ。
相変わらず大勢の学生が住んでいるようだ。

ドアすら変えていないところを見ると、当然部屋も改装なんてしていないんじゃないか?
いやー、さすがにバスルームとかキッチンは直したかな。ちょっと心配になってくる。
しかし留学生相手の賃貸って、堅い商売だと思うのだ。
この不景気、安定した経済力を持っているのは海外からの学生だったりする。学生時代に贅沢はしなくとも、学費を払える経済力があるから留学しているわけで、彼らが家賃の滞納をするというのは稀である。
滞納して問題起こしたりすると、永住権を持っていない留学生はやっかいなことにもなるので、学費&家賃はきっちり払うのだ。
ルイージファミリー。。。美味しい商売じゃん(笑)。
今は息子さんが家主やってるのかなあ。


(続く)



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