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Graceland

Posted by ジャンヌ(Mami Takayama) on 04.2013 Memphis
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メンフィスは音楽抜きにして語れない街。
そしてエルヴィス抜きにしても。

着いた翌日に早速グレイスランドに行ったのは、一番混みそうな所だから週末は避けたいと思ったからでもあるが、エルヴィスファンとしてはやはり欠かせない場所である。

ここは大人にとってのディズニーランドだ。
子供にとってのアイドルがミッキーマウスなら、エルヴィスは大人のアイドル。その大人たちが、中でもエルヴィス世代はもう70代で、白髪で杖をついている人たちが多いところが感慨深いところだが。



Saw the ghost of Elvis
On Union Avenue
Followed him up to the gates of Graceland
Then I watched him walk right through
Now security they did not see him
They just hovered 'round his tomb
But there's a pretty little thing
Waiting for the King
Down in the Jungle Room

"Walking in Memphis" by Marc Cohn



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チケットを買ったら、シャトルバスに乗ってここまでやって来る。チケット売り場とこの家は通りを挟んだだけの距離なのだが。。。
こういう手順がツーリスティックで面倒くさいが、個々バラバラにエルヴィス邸に押し寄せたら大変なことになるから仕方ない。

1957年、エルヴィスが22歳のときに$100,000で買った邸宅。
世界でも最も不動産の高い都市、東京で育つと、アメリカの不動産価格に関してはなにを聞いても「(東京のそれと比べたら)安いじゃん」となってしまう感覚がある。東京郊外の閑静な住宅街の方が、当時だってもっと高い(メンフィスが安いのだが)。そして土地の広さは何十分の一にも満たない。
エルヴィスの収入からすると、この家は贅沢でもなんでもないように思う。物欲と虚勢の強い人ならば、もっと収入と地位に見合った豪邸を手に入れたであろう。
この後、エルヴィスの人気は上昇し続け、文字通り確固たる地位も名誉も手に入れるのだが、ビバリーヒルズに移るわけでもなく、城を建てるわけでもなく、亡くなる1977年までこの家に住み続ける。

ファームランドなので土地はとても広いのだが、家自体は、外見からしてもさほど大きくない。
アメリカの郊外にはよくあるサイズの家。
マンションと呼ばれる大豪邸なら、アメリカならどこにでもある。
Hearst Castleという「超」がつく大豪邸がカリフォルニアにあって、一度訪れたことがある。
映画「市民ケーン」のモデルにもなった、かつての新聞王が建てた家。エルヴィスが築いた財産ならば、難なくこれくらいの城が持てたはずだ。
だが、それをしなかった。一般の家よりは大きいが、自分の地位や収入には見合わないくらいのコンパクトな家。ここにエルヴィスの価値観が表れているような気がする。

手に入れたお金を全てモノに変えるということには興味がなかったのだろう。
ビジネスには疎く、金銭管理は全て人任せだったエルヴィス。使い切れぬ程の大金は、ほとんど人へのプレゼントや数えきれないほどの寄付に使った。寄付はほとんど匿名で。



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玄関入るとすぐにあるリヴィングルーム。奥にはピアノルーム。
全然大きくない。いたって普通のリヴィングの広さ。
ビートルズが訪ねたときにポールが弾いたピアノというのはあのピアノなのか?いずれにせよ、ここに集まったのだろう。ジョン・レノンがエルヴィスの機嫌を損ねたという逸話つきで(苦笑)。

ちなみに、部屋はどれをとっても趣味がいいとは言えない。
インテリアのこだわりだとか何が好きだとか、そういうのはほとんど無くて人任せだったようだ。
歌うことにだけエネルギーを注ぎ、それだけに純粋だったのだろう。

玄関入るとすぐに2階への階段があるのだが(2階は公開されていない)、この階段もいたって庶民的なつくりでビックリする。
南部貴族の邸宅みたいなものを想像していたわけではないけれど、スカーレット・オハラのドレスはこの階段では幅が合わないな、みたいな。ほっとするような、ごくごく普通の階段なのであった。




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ダイニングルーム。
ここも特別広いわけでもなく、長〜いテーブルがあるわけでもなく、特別に贅が尽くされているわけでもない。
一緒に食べる人の顔が見渡せるテーブル。うちの実家のテーブルの大きさと変わらない。



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キッチン。
ここでエルヴィスは自ら、客たちにサンドイッチなどを作って振る舞ったとか。
エルヴィスって、大スターになってもピーナッツバターとバナナのサンドイッチが好物だったんだよね。
いかにもアメリカ的というか。食が庶民的すぎるというのか。
酒もタバコもせず。だから食で太ってしまったのか?
処方薬に頼らなければ、酒に頼ってアルコホリックになっていたかもしれず。なんとも言えないが。



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ツアーといっても、オーディオセットを渡されて、自分で聞きながら進むセルフツアー。
好きなだけ自分の好きなところにいてもいいのだけれど、次から次に人が押し寄せるのでそういうわけにはいかず、進まなければいけない。なにしろここは家の中なので、そうそう自由に立っていられる場所もないのだ。

ここはテレビルーム。
ビデオだとか録画だとかがない時代、裏番組を観るために3台のテレビを設置。
こういう感覚は当時としては贅沢ですね(笑)。
この黄色い部屋の趣味の悪さは置いておいて。いや、置いておけない。なに?テーブルの上の猿の置物は?
グレイスランド内には、ところどころ謎めいたインテリアが登場して楽しませてくれる。こういうのはやっぱり博物館に来ないと感じ取れないものだ。



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ファンからのプレゼントなのか、自分で集めたものなのかは全く分からないが、室内のディスプレイの統一感の無さとかセンスの悪さとか、驚きは連続する(笑)。
部屋の数々を歩きながら思った。エルヴィスって、聴覚が超えすぎていて視覚センスはかなり劣っていたのではないかと。
音楽センスがある人にはこういうタイプが多い。
簡単な例を出すと、黒人の家庭を訪れるとすぐ分かる。音楽の趣味はすごくこだわりがあるのに(コレクションとか、オーディをセットとか)、壁に飾ってある絵や飾り物のセンスのなさ!(というか、どうでもいい、という感覚がにじみ出ていたりする)。 ここまで音にこだわる人たちの、あまりの絵や写真を見る目の無さにガックリすることしばしば。
エルヴィスの家を見ながら全く同じ感覚に。きっとエルヴィスも、音楽以外のことはどうでもよかったんだろうな。エルヴィスの持てる才能は、全て音楽に行っちゃったというか。
ビジネスの才能もなかった人だから。それはそれでいい。持てるべきセンスが集約して音楽に行き、そしてあのエルヴィスが生まれたのなら、それに心から感謝したい。




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レコードコーナー。
他人のレコードをよく聴いていたそうで。
エルヴィスのカバーはどれも、エルヴィスにしか出来ない解釈で自分のものにしている。作り手が「自分の手を離れた」と喜んで思えるのは、エルヴィスみたいな歌い手に自分の曲を選んでもらったときだろう。
でも決して、高慢にならなかったところがエルヴィスのすごいところ。
大物になっても「2000席を埋めることが出来るか心配」と気を揉んだり。大スターになっても謙虚でいられるっていうのは、これまた才能。長生きしてもこの精神性は変わらなかったのだろうが、その繊細さで長く保たせるのはしんどい。



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最も悪趣味(笑)なのはこのジャングルルームと呼ばれる緑の部屋。上記のマーク・コーンの歌詞にも出て来る部屋だ。
ハワイをイメージして作ったそうなのだが。。。。うーん。。。。
木の壁と石の噴水。。。ここまではいい。フランク・ロイド・ライトにあとは任せたら、この部屋にピッタシの家具を用意してくれただろう(でもエルヴィスのイメージじゃないな)。
ここはレコーディングにも使われたらしい。
私だったらこんな落ち着かない部屋でなにも産み出すことはできないだろうが、天才が受けるインスピレーションというのは計り知れない。



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部屋だけでなく、エルヴィスの音楽の歴史、映画の歴史、衣装、レコード、トロフィー。。。。。と、盛りだくさんの展示が続く。
沢山ありすぎて、細かく見ているととても疲れるのだが、オーディオから流れて来るエルヴィスの歌声に癒される。



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エルヴィスって若い頃は細いイメージだったのだが、細かった頃のジャケットを見ても肩幅や胸板があって意外と”がたい”がいい。

後半のラスベガスのショーの時代。とても太ったけれど、なんだか背まで随分伸びたみたいに(そんなことはないだろうが)衣装が一回り大きい。
数多くのジャンプスーツが並ぶ。
このジャンプスーツのアイデアは一体どこから来たのだろう?(笑) もみあげをいきなり太くしたわけとか(笑)。
シンプルな格好して歌っていたときのエルヴィスがあまりにかっこいだけに、ギラギラのジャンプスーツとかマントはやはり実際に目にしても驚く。ラスベガスのショーにはこういうのがいいのでしょうね。かなり生地はしっかりして、お金のかかった衣装だということは分かる。でも重そうだ。




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家の庭には両親のお墓とともにエルヴィスのお墓。
かつては他の墓地に眠っていたのだが、盗難未遂事件があったりして家の敷地内に引っ越して来た。
キングともなると、亡き後も大変。ここで安心して眠ってほしい。

有名な話だが、エルヴィスは一卵性双生児として生まれたが、その双子の兄は出生後にすぐ死亡。
彼の小さなお墓もここにある。
もしその兄が生きていたら、エルヴィスと同じDNAを持つ人間が世の中にもう一人存在したら、一体どうなっていたんだろう?
同じ興味を持ち、同じ才能を持っていたならば、兄弟二人揃ってサン・スタジオのドアを開けたのか? そしてデュオでデビューしたのか?これはまたすごい話だ。
エルヴィスは、生まれてすぐ天使になった兄弟の分も親の愛情と才能を受け継いで”エルヴィス”になった、と想像した方がよさそうだ。



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グレースランドの見学が終わっても、まだまだ催し物は続く。
通りを挟んだ向かいには、ずらりと並ぶギフトショップやレストランやカフェに混ざり、いくつかのミュージアムがある。全部丁寧に見て回ると、かなり時間がかかる。
年配のビジターが多いので、彼らは食事を挟みながらゆっくりと、じっくり座ってフィルムを見たりして周っている。そして最後に沢山お土産を買って。。。。ここで丸1日過ごす人は少なくないのだろう。



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エルヴィスが所有していた車の一部を公開しているミュージアム。

50年代のアメリカの車は実にいい。
この時代に青春時代を過ごし、若くして好きなように車を買えた層はラッキーだ。




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有名なピンクキャディラック。



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きらびやかな美しい車のコレクションが並ぶのだが、これを見て「エルヴィスが贅を尽くした成金趣味」だとは全く思わない。
確かに、「一般人」から見れば手の届かぬコレクション。だがまず、エルヴィスははるかに「一般人」からかけ離れていることを肝に銘じなければいけない。そして「単なる金持ち」からも。「大」ではなく「超」がつくスーパースターなのだ。
彼が稼ぎ出した巨万の富は想像がつかないが、それを考えると「このくらいのご褒美当然でしょう」といった程度のコレクションなのだ。

モーターバイクのコレクションには、HONDAのバイクもあった。
エルヴィスにはハーレーのイメージがあったのだけれど、HONDAも持っていたのね。




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エルヴィスの時代というのは、もろ公民権運動の時代とかぶる。
人種隔離や差別の激しい南部で育った白人エルヴィスが、黒人の歌に影響を受けそれを自分のものにするといった行動は、当時としては考えられないことだった。
彼は黒人側からは「黒人の歌を盗んだ」と言われ、「お金があるのに公民権運動を支援しない」とさんざん非難された。

エルヴィスは単に歌に純粋だった人物だとしか言いようがない。
60年代に活躍する、政治的メッセージの濃い歌を歌うシンガーたちとは全く違う。彼はアクティビストではない。そしてそれに問題があるのだろうか?
彼の中では、公民権運動が始まるもっと以前から、人種の壁などはずっと超えていたのだ、当然のこととして。
黒人のゴスペルやブルースを愛し、尊敬し、それが彼の音楽の血肉となる。
バックコーラスに黒人女性たちを取り入れ、公演先から彼女たちが拒否されると、彼もボイコットした。エルヴィスが来なければ困ると、公演先から謝罪されてのちにどんなに金を積まれようが、そこにはもう行かなかったという。
黒人だから白人だから、ではなく、いいものはいいのである。黒人をサポートするとかそういう計算はなく、彼は彼女たちが「いい」からバンドに入れたのであり、黒人だから入れたのではない。その「いい」ものを拒否する公演先が、彼は気に食わないのだ。ただ黒人だから、という理由で拒否する理由が分からないのだ。「黒人だから拒否する」ことが当時の白人のベースにあり、エルヴィスもそれを「白人として」当然として受け入れていたならば、エルヴィスは生まれていなかったのだ。

人種の壁を越えるのは、公民権運動のマーチに参加したり声高に平等を唱えることだけが重要なのではなく、個人個人が自分のできることから、身の回りから、お互いに交わって行こうとする姿勢が大切なのだ。
それは近所の肌の色の違う人と友達になることや、一緒にご飯を食べることから始まるかもしれない。歌手ならば一緒に歌を歌うこと、もう少し影響力を持つ人ならば、一緒に音楽を作ること。
世界的に影響力を持つエルヴィスという大スターは、人種の壁を最初から極自然に超えて誕生している。それが「声高なメッセージ」でもなく、「政治的意味合い」でもないため、感じない人は感じないだけなのだ。エルヴィスのジェヌインさはそこにある。




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拙著「ブラック・カルチャー観察日記」でも触れたが、黒人たちの間では、エルヴィスを拒否する姿勢が今でもある。「彼は黒人の音楽を盗んだ」と。
「彼は白人だから成功したのだ」というのは事実だろう。当時の時代を考えると仕方のないことで、それはエルヴィスのせいではない。

歌手としてエルヴィスを認めるのに、好きなのに、聴きたいのに、「彼が白人だから」という理由で、黒人たちの面目を保つために拒否せざるを得ない黒人たちが今でも多い。とくに年配層には多い。
メンフィスでキング牧師が白人に殺され、それ以来黒人が白人と一緒にいることさえクールなことではなくなってしまった。黒人リーダーの死は、おかしな方向で、黒人たちが自ら選ぶ「人種隔離」へと導かれていったのだ。

グレイスランドを訪れる人種は、白人が大半。
その中に、ちらほらと黒人が見られるが、かなり珍しい。
「エルヴィスを拒否することがクール」とされた黒人社会で、「それでもエルヴィスが聴きたい」「知りたい」とここに足を運ぶのは勇気がいることであろう。


我々はギフトショップは素通りして歩いていたが、たっぷり3時間以上はかかったグレイスランド。
夫が「『グレイスランドではボトル入りのエルヴィスの汗を売っている』と聞いたことがある」と言った。そういえば、私も昔そんな話を聞いたことがある!海を超えた日本でも。
ボトル入りの汗とか、汗付きのタオルとか。そんな物売っているわけないんだよね(爆)。
パソコンもネットも無い時代の、微笑ましき迷信を思い出した。




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