Sun Studio

Posted by ジャンヌ(Mami Takayama) on 05.2013 Memphis
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メンフィス。音楽ファンの整地、サン・スタジオ
この日はもう楽しみで楽しみで、10時からスタジオはオープンするというのに、早起きしたので9時半には着いてしまった。開く前にゆっくり外から眺めたかった、というのもあるのだけれど。



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706 Union Avenue.
この白いドアを、エルヴィスもジョニー・キャッシュも他数多くのレジェンドたちが、若い頃ドキドキしながら 開けたと思うと感慨深い。



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ジェリー・リー・ルイス。ミリオン・ダラー・カルテットの一人で彼もサン・スタジオからデビューした、ロックンロール黄金時代の立役者。若かりし頃のエネルギッシュなピアノ演奏はすごいですね。
後半不遇の時代に、酔っぱらってグレースランドに「エルヴィスに呼ばれた」と言って押し掛けて拳銃携帯していたために捕まったり、いろいろやってくれた彼。
ツアー中にガイドに聞いた話によると、現在77歳でまだまだお元気だそうで。最近7度目(!)の結婚もしたらしい。


10時前なのにもうドアは開いていて「もう入っていいわよ」みたいな雰囲気。スタッフたちが準備していて、我々は一番乗り。アメリカで、開店前に入れてくれるなんてあり得ないのでビックリ。「まだオープンしていないけれど、ツアーのチケットならもう売ってます」と。
すぐに満員になってしまうであろう10時半からのツアーチケットを早速購入。

このあと続々と客たちが入り始めた。



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中に入ると壁にはミリオンダラーカルテットの4人の写真。
フォトグラファーとして言わせてもらうと、これは本当に羨ましいほどいい写真だ。
写真に必要な決定的瞬間というのを持ち合わせていて、こんな場所に居合わせることも奇跡的なのだから、誰もが撮れる写真ではない。

左から、まだメンフィスの外では無名だったジェリー・リー・ルイス、「ブルー・スウェード・シューズ」でヒットを出したばかりのカール・パーキンス、サン・レコードからRCAに移籍し、既にスター街道まっしぐらのエルヴィス、そして前年にサン・レコードからデビューしカントリーチャートでヒットも出していたジョニー・キャッシュ
ジョニー・キャッシュファンとして私はこの日、ジョニー・キャッシュTシャツ着てツアー参加(笑)。彼のアルバム"At Folsom Prison"は子守唄として何度も聴いて育ちましたから。体にしみ込んでいる。リスペクト。

夫は「サンスタジオにはブルースウェードシューズを履いて行く」とかなんとか言っていたけれど、そんな靴は持っておらず、実現しなかった。




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サンスタジオのトイレ。 このフタ、結構欲しい人いるんじゃないでしょうか(笑)。

最初のツアーは10時半なのでしばらく待っていた。
10時10分頃、ツアーバスから大量の人たちが降りて来て、待っていた部屋がぎゅうぎゅうに。彼らはすごい勢いで土産物を探索し、エネルギッシュにTシャツやらマグカップを両手に抱え、大量に買い占める。こんなに多くの人たちが一緒にツアー参加するのか?とゲンナリしていたら、彼らは15分くらいして一斉にまたバスに乗って行ってしまった。なんと、ギフト目当てだけのツアー客だったのだ。どこかのホテルから来たのかもしれない。
中国四川省で中国人たちとツアーバスに乗ったことがあるが、限られた時間内での土産物屋でのエネルギーは中国人だけかと思っていたら、メンフィス、サン・レコードの観光客もそうであった。




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さて、ツアーが始まる。定員20人くらいだったかな。
なにしろスタジオ内は小さいので、そんなに人は入らない。
早口であるが、ハキハキと中身の濃い詰まった説明をしてくれる女性ガイド。ゆっくり話していたら、これだけの情報を時間内に詰められない、というのもある。



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サン・スタジオというと、エルヴィスが初めてレコーディングした場所として有名であるが、設立者のサム・フィリップスが発掘したミュージシャンたちは枚挙に遑がない。
1950年にスタジオオープン。
ハウリン・ウルフ、B.B.キング、ジェームス・コットンなどなどのブルースミュージシャンから、R&B、ソウルのルーファス・トーマス、そしてエルヴィス、ジェリー・ルイ・ルイスなどのロカビリー、ロックンロールスターたち。




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この小さなレコーディングスタジオに集まった豊かな才能たち。メンフィスという街はそれだけでも奇跡としかいいようがない。偉大なるサム・フィリップス。



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エルヴィスがレコーディングに使ったシュアカンパニー製のマイク。
歌の上手さだけでなくて、マイクの持ち方一つにしてもエルヴィスのパフォーマンスには華があった。天性のエンターテイナー。一体どれだけのミュージシャンが、彼の真似をしたことだろう。




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これはジョニー・キャッシュが使ったギターではないけれど(そうだったら抱えちゃうよ〜)、似たもの。
初期の頃彼のバンドにはドラマーがいなかった。だから彼は1ドル札を弦に挟み、それを動かしてドラムの音を自分で作っていたとか。
1956年のオリジナルレコーディング、"I Walk the Line"ではそれを聴くことができる。




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またこの写真が登場する。
この4人の話、「ミリオン・ダラー・カルテット」は現在ブロードウェイミュージカルにもなっている。
歴史的な日。1956年12月4日。カール・パーキンスがレコーディングのためにサンレコードのスタジオにいて、無名だったジェリー・リー・ルイスがピアノを弾いてセッションに加わっていた。そこに、RCAに移り「ラヴ・ミー・テンダー」で大ヒットを出し大スターになっていたエルヴィスがひょっこり挨拶に現れる。隣の部屋でサム・フィリップスと話していたエルヴィスは、彼らの音を聞いて自分もセッションに加わることにした。既に別の用件でスタジオにいたジョニー・キャッシュも加わることになり、サムはテープを回した。
垂涎物なお話。こんな話、作ろうと思ったって作れない。当然ながら、この4人が一緒に集まったのは、この日、一日限りであった。

あ〜。。。録音してくれていたサム・フィリップスよ、ありがとう。

エルヴィスが上を向いた瞬間のこの4人の写真は、この日が奇跡的なことと同様奇跡的。

ツアーでは、録音されたテープを聞かせてくれる。
エルヴィスの声。”I heard this guy in Las Vegas - Billy Ward and his Dominoes. There's a guy out there who's doin' a take-off of me; 'Don't Be Cruel'. He tried so hard, till he got much better, boy; much better than that record of mine”
「ラスベガスのショーでビリー・ワード&ザ・ドミノスってのを観たんだ。そこにすごい男がいて。ボクの”Don't Be Cruel"を歌ったんだけど、すごく上手くて。ボクのレコードよりも、ずっとずっといいんだ」

このエルヴィスのなにげない一言だけどすごい。こういう言葉がミュージシャン同士で話す時の、エルヴィスの素なのだ。それが残っていることもすごい。
エルヴィスが言っている男性とはジャッキー・ウィルソンという黒人歌手のことなのだが、エルヴィスは当時彼の名を知らない。知らないけれど「ボクより上手いや」と素直に感じる。エルヴィス21歳のときのこと。
若くしてスターになったのに、天狗にならず謙虚だということもすごいが、1956年という年代を考えると、白人スター歌手が素直に無名の黒人歌手を誉め称えることもすごい。
前回の記事にも書いたが、エルヴィスには公民権運動云々以前から、黒人を下に見るとかいう感覚はない。今では当たり前ではあることも、当時は南部の白人の中では口にすることさえ憚れることを、当然のように言っている。

彼はその後、ラスベガスのジャッキー・ウィルソンのショーにはよく顔を出すようになった。ミュージシャンとしてのリスペクト。そして二人は仲のよい友人になる。
エルヴィスが映画スターになってジャッキーをスタジオに招待したことがある。そのときに二人で撮った写真に「Jackie, You have a friend, forever. Elvis」とサインしたものをもらった。それをジャッキーは生涯大切にしたとか。
ジャッキーは、「黒人たちは皆、エルヴィスは黒人の音楽を盗んだとかって責めるけれど、エルヴィスが出て来てから黒人歌手たちはこぞって彼を真似たんだ」ともフォローしている。



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このスタジオにまつわる話や、スタジオに関わったミュージシャンたちの逸話はいくらあげてもキリがない。
旅人一人一人が感じることはそれぞれであろう。

サンスタジオを表敬訪問したボブ・ディランは、何も言わずにレコーディングスタジオに入って行き、ひざまづいて床にキスをし、そして黙って出て来たとか。
いい話を沢山聞けた。



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感動しまくりのツアーは、あっという間に50分経過し終了。
ツアーバスで来ている客たちは「バスが発車しますよ〜」との合図でさっさと出て行ってしまったが、我々はまだ時間があるのでしばらくスタジオで余韻にひたる。


ところでこのスタジオ。駐車場があるのだが、通りからは見えなくて分かりにくい。
来る時にこの回りをぐるぐると2周してやっと見つけた。スタッフに言うと、「大体みんな2周するみたいね」って。




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