Stax

Posted by ジャンヌ(Mami Takayama) on 09.2013 Memphis
stax1.jpeg Memphis



サン・スタジオに行った日の午後は、スタックス・ミュージアムへ。

中心地から離れ、ずいぶんとさびれたまんまの地域にポツンとある。



stax2.jpeg



スタックス・レコードという、ソウル/R&B中心のレーベルがかつてあった所で、今は博物館となっている。
ここも音楽ファンの聖地であるが、サン・スタジオやグレイスランドやロックンソウルミュージアムのようにシャトルバスが出ているわけではないので、ツーリストは車で来るしかない。バスや電車で来れる場所ではない。
その不便な点と、ちょっと治安の悪い地域にあるという点が原因でか、ミュージアムの充実ぶりに反して客の数が少ない。駐車場も広いし(サン・スタジオの駐車場は狭くてすぐ満車になるが)、まことに勿体ない。




stax3.jpeg



ルーファス・トーマスブッカー・T・ジョーンズアイザック・ヘイズオーティス・レディングサム&デイヴ。。。。。
ここから売れっ子になったミュージシャンたちの数々。
スタックスの近所に住んでいる人たちがスタジオに現れ発掘されたということも多く、当時のスタックス・レコード周辺の住民マップを見ると驚く。メンフィス黄金時代。



stax4.jpeg


"Do the Funky Chicken"で有名なおもろいおっさん、ルーファス・トーマスは、サン・レコードとスタックス・レコードの両方でレコーディングをしたことのある、唯一のアーティスト。メンフィスの音楽史には欠かせない人物。
夫の親戚に、こういうおじさんではなくて、おばさんがいるんですけどね。本人には「似てますね」とは言えないけれど。




stax5.jpeg




スタックス・レコードの歴史は、サン・レコードに比べると10年遅く、既に世の中にはエルヴィスがメンフィス出身の大スターとなって活躍している時代から始まる。「メンフィス」が勢いづいていたときと言ってもよいだろう。
サン・レコードのサム・フィリップスもすごいけれど、スタックスの創始者ジム・スチュワートエステル・アクストン姉弟もすごい。ビジネスの辣腕ぶりではなくて、音楽、またはミュージシャンたちに対する真摯さにおいて。
彼らの元でレコーディングを行なったミュージシャンたちが、肌の色を超えて本当に楽しんでいたことが伺える。人種の垣根を越えることは、スタックス内においては当然のこととして存在していたが、外の世界は違う。南部では、黒人と白人はトイレからレストランまでハッキリ分かれている時代。スタジオ内で一緒に座り、同じ立場の人間として仕事をする、音楽をする。スタックスは画期的だった。だから、白人がオーナーのスタジオでも、多くの黒人ミュージシャンたちが毎日ドアを叩いた。




stax7.jpeg


アイザック・ヘイズの派手な衣装。



stax12.jpeg



かつてビール・ストリートに有名なLanskyという紳士服の店があった(場所は移転したが今も健在)。
ユダヤ系のランスキー兄弟で有名な老舗だが、エルヴィスをお得意さんにしたことでさらに店は繁盛。彼がエド・サリバンショーに初出演する時のスーツから、公私にわたりエルヴィスの服を作った。
他にB.B.キング、カウント・ベーシー、デューク・エリントンなど、人種問わずそうそうたる顔ぶれの顧客。

「ランスキーで服を作ってもらう」ことは、スタックスのミュージシャンたちへの憧れにもなり、ステータスにもなった。
アイザック・ヘイズものちにここのお得意さんになる。
シックなスーツから、派手な衣装まで請け負うランスキー。

映画「ミステリー・トレイン」で、うらぶれた怪しいホテルの黒人ホテルマンが、赤いスーツに赤いタイをしている。そしてベルボーイに「ランスキーに服を買いに行けよ」と促すシーンがある。
カッコつけたい男たちが、憧れたランスキー。




stax8.jpeg



アイザック・ヘイズの車。
キンキンピカピカ。中は白いふかふかのカーペット張り(笑)。とても趣味がいいとは言えない。。。。
彼の、ダイヤモンドでできたグランドピアノデザインの時計とかも展示してあったけれど。。。。成金趣味とはこのこと。




stax10.jpeg



スタジオは広い。
元劇場をそのまま利用したスタジオ。天井の斜面が音響効果を偶然もたらし、それがここから発信されるメンフィスサウンドとなった。
ドラムやピアノやギターの位置が、そのままの場所で保存されている。




stax11.jpeg



エンジニアは学校に行ったわけでもなく、みな手探りで学びここで音を作っていったという。



stax9.jpeg



スタックスの成功は続いたが、ビジネス面で不運が続き60年代後半には窮地に追い込まれる。
そして1968年のキング牧師の暗殺事件が起こり、それはスタックスの窮地に拍車をかけたのだ。

スタックスが出来た頃には白人の多く住む地域であったが、スタックスの成功と共に黒人も多く移り住むようになった。「黒人から愛される白人の会社」であったスタックスだが、キング牧師の事件で(犯人は白人男性とされた)「黒人が白人の側にいる」こと自体がメンフィスの黒人社会ではクールなこととされなくなった。
当然のごとく人種が混ざり合ったスタックスは自然に消えて行き、地域の黒人による暴動で白人居住者はみな引っ越して行った。
時代の感覚を超えたスタックスの雰囲気であったが、時代の波には逆らえなかった。

スタックスで育ったミュージシャンたちにとっては、心の痛む時代であったことだろう。
スタックスレコードの専属メンバーだったドナルド・ダック・ダンが、「スタックスでは、誰が黒人とか白人とか意識することもなく、単に仲間として僕らはそこにいた」と。それが皮肉なことに、公民権運動の時代に引き裂かれたのだ。キング牧師の死は、それほどアメリカ国内の、特にメンフィスの温度を急激に変えたのだ。
「でも、僕らは本当に楽しい時間を過ごした。とにかく楽しかった。それを、皆は忘れないでほしい」と。


スタックスミュージアムは2003年にオープンと、まだ新しい。
スタジオの建物は閉鎖のあと、スープキッチン(地域のホームレスなどに無料の食事を提供する場所)として教会が使ったりしたこともあったが(なんと教会はたった$10でこの建物を買った!)、ほとんど長年放置されていた。
映画「ミステリートレイン」に、ゴーストタウンの荒れたスタックスが出て来る。
スタックスに愛を注ぐ有志たちが、ここをミュージアムにしようと時間をかけて実現。中身の濃い、とても充実した博物館となった。3時間半くらいいたが、多分好きな人はもっと過ごせるだろう。




stax13.jpeg



『黒人コミュニティ、「被差別と憎悪と依存」の現在』高山マミ著
亜紀書房より去年発売されました。
Amazon
ビーケーワン
丸善&ジュンク堂
楽天ブックス
セブンネットショッピング



『ブラック・カルチャー観察日記』高山マミ著 
全国の書店で好評発売中!!
Amazon


スポンサーサイト