リベラーチェ

Posted by ジャンヌ(Mami Takayama) on 17.2013 映画&ドラマよもやま話
liberach.jpeg




「世界が恋したピアニスト」と呼ばれたアメリカの人気ピアニスト、リベラーチェの生涯を描いた映画、「Behind the Candelabra」。日本での邦題は分からない。

私はこの映画を知るまで、アメリカで(世界で)「超有名な」リベラーチェという人間を知らなかった。
夫に、「ええ〜っ!!? リベラーチェを知らないの〜??」と驚かれた。
1987年にエイズで亡くなるまで、派手なコンサート、ステージ衣装、楽しいピアノ演奏、料理の腕前、気さくな人柄とおしゃべりで、テレビでも茶の間を賑わせていた大スターだったらしい。30代以上のアメリカ人なら、彼を知らない人はいないとか。

時代的なこともあり、リベラーチェはゲイでありながらその事実は一切公にはしなかった。彼のファンのほとんどは女性ということもあり、徹底したショーマンの彼にとって世間の目は命だった。
映画は、実生活でリベラーチェの若い恋人だった男性の本を元に作られている。
かなり個性的なリベラーチェにマイケル・ダグラス。彼の40歳年下の恋人役にマット・デイモン。そして監督はスティーブン・ソダーバーグ。
この面子で、なんと配給会社が長い間見つからなかったといういわくつきの映画だ。
なぜなら、あまりに映画の内容が「ゲイ」だから(笑)。

当時の大スターはこういう生活だったんだろうな、と思わせる、ラスベガスの彼の大邸宅。
(同じくらいエルビス・プレスリーも稼いでいたはずだが、彼のメンフィスのグレイスランドの普通ぶりがかえって新鮮だ)。
ゲイのおじさまがいかにも好きそうなバロック調の家具に囲まれた部屋。キンキンキラキラ。そしてお決まりの毛皮やジュエリー。
美しさを追求する芸術家に、さらに美を求めるゲイ精神が加わると、それはそれは度を超したキラビやかな世界になる(お金がある人に限るが)。
そんな大邸宅で、一緒にお風呂に入り、ベッドでイチゴ(!!)を食べる二人の甘い日々。

マイケル・ダグラスのリベラーチェはすっごく面白かったし、マット・デイモンは相変わらずしくじらない。ポチャポチャ体型のマットが、よくあそこまでダイエットして体鍛えてビキニパンツをはいたもんだと拍手を送りたくなる。絶対に肉体を披露してはいけない俳優だと思っていたから。さすがプロ根性だ。
元々美形のロブ・ロウが、彼らの実在の美容整形外科医役で登場。美容整形外科医というのは自分にも手術を施すのか、すごいツヤツヤにアップされた顔で出て来るから笑える。
笑えるけれど、これが当時は「美しい」と思われていた美意識で、しかもこういう顔は現在のハリウッドでも「しわしわの顔より美しい」と思われているのだから恐ろしい。

大金持ちのゲイの大スターの生活なんて、ストレートで一般生活を送る人たちから見れば一番かけ離れた世界かもしれぬ。
私は彼を知らなかったのでショックもなにもないが、当時彼の大ファンで、彼を「ストレート」だと信じ、彼のコンサートに通った女性たちにとってはショックは大きいかもしれない。
ゲイなんて御法度のクリスチャンファンたちは、彼がゲイだと知っていたら地獄に落としたに違いない。

時代は変わったな、と思う。
今だったら、彼はゲイでもスターだろう。
でもまだまだ問題は残ってはいる。アメリカには同性愛反対の保守派が根強く、人気商売はそれを無視出来ない。本人がカミングアウトしたくても、エージェントが許してくれなかったり。
いまだに配給会社が決まらなかったっていうのも、それを象徴している。「ブロークバックマウンテン」から月日は流れているというのに。

これほどまでのアメリカの大スターが、なんで日本で知られてなかったのか考えてみた。
私だけが知らなかっただけとは思えず。。。。
なんでもかんでもアメリカの人気者は紹介されていた日本で、どうしてリベラーチェはプレスリーやシナトラのようにならなかったのか。
思うに、日本人にはあのキンキラキンのステージ衣装やステージそのものが(ロールスロイスに乗ってステージに登場したりする。笑)、悪趣味と映ると予想されたのではないか。
その後ロック界でもポップ界でも、キッスやフレディ・マーキュリーやデビッド・ボウイなど出て来て、男性の化粧やジュエリーやヒラヒラ衣装や毛皮のコートやヒールの靴だって当たり前になった。ビジュアル的に洗礼を受けた世代の日本人にはなんでもないことだが、元来「わびさび」(笑)の文化において、キンキラキンシャンデリアを人間にしたようなおじさんピアニストは、その世代のおばさんたちには受けなかっただろう。

「こんなピアニストがいたんだ」と知れるだけでも、この映画は面白い。
映画は彼のプライベートなゲイ生活に重点が置かれているので、彼がどれだけのピアニストだったかは、Youtubeなどで見るしかない。若い頃はかなりの二枚目で、ピアノの腕は大したものである。「表」に出ている部分だけで十分な色を持っている人なのだが、「裏」もここまで濃いとは(笑)。

悲しいほどまでに「若さ」にこだわり、若かりし頃の美を保とうとするリベラーチェ。
その世界にいたら、きっとその価値観から抜け出すことの方が困難で、自分だって容易に中毒になるかもしれない。「人間誰しも年をとる。自然でいましょう」なんて開き直れないだろう。
そう思うと、笑ってもいられないのだ(でも、やっぱりマイケル・ダグラス&マット・デイモン&ロブ・ロウの整形顔は可笑しい)。



料理ブログ「ジャンヌ食堂」も、更新しております。
今日は大根ピクルス
きらびやかなリベラーチェの世界と違って、大根ピクルス!!これぞ庶民(笑)。




『黒人コミュニティ、「被差別と憎悪と依存」の現在』高山マミ著
亜紀書房より去年発売されました。
Amazon
ビーケーワン
丸善&ジュンク堂
楽天ブックス
セブンネットショッピング



『ブラック・カルチャー観察日記』高山マミ著 
全国の書店で好評発売中!!
Amazon
スポンサーサイト