スポンサーサイト

Posted by ジャンヌ(Mami Takayama) on --.-- スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Dallas Buyers Club

Posted by ジャンヌ(Mami Takayama) on 15.2014 映画&ドラマよもやま話
dallas21.jpeg



年が明けると映画の賞のシーズンなので、年末から評判の映画が目白押しになる。

最近観た中でインパクトのあったのは、「ダラス・バイヤーズ・クラブ」。
予告観た時点では、主演のマシュー・マコノヒーの激やせ役作りの姿に驚いたが、カウボーイとロデオのギャンブルの話かと思っていた。

カウボーイとロデオは間違っていなかったが、決してそれは話の軸ではなく、余命30日と宣告されたHIVに感染した男(マシュー演じるロン)が、メキシコで求めた治療薬をアメリカの患者にさばく、実話に基づいた話。

色んなことが思い出される。エイズと時代。エイズ患者に向けられた差別。
時は1985年。俳優のロック・ハドソンがエイズで亡くなり、世間を大ショックに陥れた年。
アメリカ人にとって、ハドソンの死は二重にショックだった。
「男性的」が売りで世の中の女性が夢中になった俳優が、同性愛者だったこと。そして、彼が「忌まわしい」エイズだったこと。
同性愛者とエイズへの偏見は、今とは比較にならぬほど強烈だった80年代。その「忌まわしき」物を一緒にくっつけて、「エイズはホモセクシャルの病気」と皆信じていた。天の罰だと。

とりわけ保守的なテキサスで、この話は進む。
ロン(マシュー)は仕事中の怪我で病院に運ばれ、血液検査でHIV感染を宣告される。同性愛者でないのに何故?
彼も典型的なテキサン(テキサス人)で、カウボーイで、ホモが大嫌い。そんな自分が「ホモの病気」になった。しかも余命30日。混乱と焦りの中で、図書館で病気について調べる。
しかし当時、アメリカでは認可された治療薬が少なく、患者は見殺し状態だった。
彼は自ら運転しメキシコに行き、代替え役を大量にアメリカに持ち運び、患者にさばくことを考える。
認可されていない薬の売買は違法になるので、彼は「クラブ」を作り、患者をクラブ会員にして「会費」を取る。しかし薬は「無料」で配布。これなら法にひっかからない。。。。(けれど色々と苦戦は待っているのだが)。

薬やサプリの偉力か、彼の使命の力からか、彼は30日の余命を超えてもガリガリに痩せた体で生き続ける。
彼の仕事の相棒に、病院で隣りのベッドだったトランスジェンダーのレイヨン(ジャレッド・レト)という男性(格好は女性)を選ぶ。レイヨンもエイズ患者。ホモフォビアだったロイが、彼(彼女)の存在で少しずつ変わって行く。

この2人の俳優の演技は鬼気迫る物があり、目を離せない。
マシューは役作りに50パウンド(23kg)、ジャレッドは30パウンド(14kg)体重を落とした。
2人共、元がデブではない。無駄肉のない、筋肉質のスレンダーなイケメンである。数ヶ月の絶食に近い減量は、健康な人間にとっては過酷そのものだろうが、その追いつめられた精神状態が演技の迫力に拍車をかけている。

減量だけが評価されているわけではない、もちろん。演技がすごいのだ。
だが、メイクでは補えない本物の痩せっぷりというのは、患者の痛々しさを表現し、演技を補う。
マシューの、肩の肉が落ちた背中の丸さ(背中が丸いのは演技だろうが、それが痛々しい)、腰骨、尻の肉のこけかた、病的なふくらはぎや腿、ほお骨の出っ張りと影が落ちる頬のこけ、首のしわ、どれもが死に近い人間の持つ風貌。
だけど、ギラギラした目だけは生への執着を表している。

ジャレッドの痩せ方も別人で、最初彼だと気づかなかった。指や腕や足の細さは女性そのもの。
(ちなみに彼は、6年前の「Chapter 27」では役作りで超デブになっている)。
トランスジェンダーとして生まれて来た人間の持つ悲しさと繊細さを、はかなく力強く演じていて、これは圧倒的。

この映画の構想は20年前からあったのだが、題材的にスポンサーがつかず財政的に難を極めた。
その後も何度か再考されては、たち消えて行ったという。
現実的に、映画にするには興行的に採算性がないと無理なのだ。

80年〜90年代ってつい最近のように感じるけれど、ある人たちにとってはどれだけ息苦しい時代だったか。
きっと今から20〜30年経って、2010年代を振り返ったとき、「今では何でもないことに、信じられないくらいに保守的だった」「こんなに世間は偏見と誤解に満ち満ちていたのか」と言えるくらいに改善されていると信じたい。
ロンが闘ったAZTという薬(エイズの発症や症状を遅延させる)は、後年正式に米国内で認可される。
おかげで彼は30日どころか7年も生き延びた。

この話は、弱者(患者)のために闘ったヒーロー物語としてではなく、人間の極限の望み、「生きること」を軸に描かれている。
たった30日の余命を宣告されても、それでも人間って少しでも長く生きたい、と切実に思うのだ。
そして、生きる希望を捨てずに生きる人間を単に強い人物として描いていない。死が怖くて怖くて仕方ない。その恐怖を和らげるためにコカインを常用する2人。
強くて弱くて、勇敢で臆病な極限におかれた人間を、2人の俳優が代弁して演じている。

先日のゴールデン・グローブ賞で、マシューとジャレッドは主演男優、助演男優賞を合わせて受賞した。
賞に値する演技。
イケメンの可哀想なところは、演技がうまくてもいまいち評価されないところ。イケメンじゃないと「巧い」とされるところを、二枚目がやるとスルーされる。
映画界では、二枚目は人の二倍努力しなければいけない(笑)。金髪碧眼の正統派二枚目は特に。
金髪碧眼でも、マット・デイモンは二枚目じゃないから巧く見える。本当に巧いけれど。
一方、ブラッド・ピット同様、マシュー・マコノヒーも不運な星の下に生まれた(笑)正統派二枚目。
だけど今回彼は人の3倍は努力したんじゃないかなw。 その努力は報われたと思う。
でも、ハンサムって、メイクに頼らず「ハンサムじゃなくなる」って大変なことなんだな、と感じた。「近寄りたくない」と感じさせなければいけない汚れ役、見事でした。




料理ブログ「アメリカ・無国籍食堂」も更新しております。どうぞよろしく♪
最近のメニューは、タピオカ入りココナッツミルクのホットデザートカフェマキアートクランベリーとホワイトチョコレートのクッキーなどなど。



『黒人コミュニティ、「被差別と憎悪と依存」の現在』高山マミ著
亜紀書房より去年発売されました。
Amazon
ビーケーワン
丸善&ジュンク堂
楽天ブックス
セブンネットショッピング



『ブラック・カルチャー観察日記』高山マミ著 
全国の書店で好評発売中!!
Amazon
スポンサーサイト
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。