The Imitation Game

Posted by ジャンヌ(Mami Takayama) on 20.2015 映画&ドラマよもやま話
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実話も十分に、作り話ほどに奇妙かつ興味深く驚異である。
最近、自伝や実話を元に制作された映画が本当に多いけれど、他人が実際に体験している出来事の方が、人は共鳴したり驚いたり感心したり感服したり考えさせられることが容易いからにちがいない。

「The Imitation Game」(邦題:「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」)も、実在したイギリスのアラン・チューリングという人がたどった数奇な人生のお話。
イギリスがナチに包囲されていた戦争時代。
イギリスはドイツ軍の暗号機エニグマを盗むことに成功するが、暗号を解くには優秀な数学者の頭脳が必要ということで、チューリング始め複数の頭脳たちが呼集される。
「超」がつくほどの優秀な数学者の頭脳が、敵国の暗号解読に利用されるという背景がそもそも数奇である。

暗号解読に成功しても、ナチは毎日コードを変えてくる。だから人間たちが解読しても時間がかかりすぎ、戦争終結には結びつかない。
そこでチューリングは機械を生み出す。
その、当時「チューリングズマシーン」と呼ばれた機械が、コンピュータの発想の元となるもの。
コンピュータという言葉も概念も全く世界にない時代に、人工頭脳を考え出した天才。

「超がつくほどの天才」というのは、どんな分野でも同じだが、あまりに考えていることとか生み出すものが周囲の「普通の天才」たちからかけ離れているため理解を得られない。
チューリングの機械も常軌を逸していたので、周囲の説得にも苦労する。
天才は周囲の理解こそあって社会的役割を果たすことができたり、人とのコミュニケーションがはかれたりする。全く無いとただの「変人」「「危険分子」で終わってしまったりする。
チューリングの場合も然りで、彼を理解してくれる女性(同じ数学者)との出会いなども描かれている。

ただ彼はホモセクシャルであった。
その時代にイギリスでホモセクシャルということは犯罪であり、社会から「天才部分」は認められても、ホモセクシャルの部分は断じて許されない。
同性愛者というのは異性愛者に比べると当然今でも少ない。それゆえ強い個性だと私は思っているのだが、超天才チューリングを数奇な運命に導いたのは、彼のホモセクシャリティも大いにある。

イギリスによる暗号解読の事実は、50年間にわたり極秘にされていたこと。
だからチューリングの職歴どころか存在すらも、極秘扱いで世間に知られることはなかった。
戦後中年になったチューリングは、ホモセクシャル治療のために精神病院に送られる。そう、ホモセクシャルというのは当時「病気」扱いで、「治すべき」ものなのであった。忌まわしきものを治療する、という、現在では考えられないほどの恐ろしい考え。
薬物治療によりューリングは廃人のようにされ、結局彼は41歳で自殺する。

人間というのは生まれた時から個性があり、その後の環境によってさらに個性は育てられる。
持って生まれた容姿と同じように脳みそは、どこにいつ生まれようが変わることはできない。
人生の中で人間関係や居住場所は自分で選択できても、絶対にどうあがいても変えられないものに「時代」というものがある。時代に左右されない人生を送ることができる者はいない、と考えなければいけないだろう。

チューリングという天才数学者も、戦中でなければその役割を任命されなかった。彼の頭脳はどのように生かされたのだろう?と思う。
そしてもし50年後に生まれていれば、ホモセクシャルがゆえに犯罪者扱いもされず、ましてや薬物治療なども受けなくてよかった。

人間は時代から恩恵も受けるが被害も被る。
時代がゆえに才能が開花する人間もいれば、その時代がゆえに開花できない人間もいる。
どんなに努力してもあがいても、変えることができない怪物、「時代」。
人間って所詮、時代の歯車になるしかない。そしてその翻弄は、決して悪いことだとも思わない。
人間は翻弄されるがこそ、数奇な人生も生まれるし、強烈な個性をも持つこともできる。

時代の違いがあるからこそ、「実話を元にしたお話」って面白いんだろうな、と。
実在の人物のどこに焦点を当てるかで、映画は全然違ってくるけれど、「イミテーションゲーム」のチューリングの描き方には好感が持てる。
なんといってもベネディクト・カンバーバッチが演じている。
カンバーバッチはこういう天才役もピッタリだけど、「8月の家族たち」では、気が弱くて不器用な役を非常に印象に残る演技で活躍していた。しかも「8月の家族たち」では南部訛りの米語を話していたにも関わらず、「イミテーションゲーム」では見事にイギリス英語で(彼はイギリス人なので当たり前ですが)。
俳優にとって、実在の人物を演じるほど難しいことはないだろう。よく知られた人物を演じるならば、そのイメージを壊さずにかつオリジナリティを出さなきゃいけないし、チューリングのようにあまり知られていない人物を描くならば、そのイメージづけの責任がある。
カンバーバッチの演技は、観客が十分にチューリングに興味をもつようになる役割を十分に果たしている。
すっかりカンバーバッチのファンになってしまった。



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