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クラクフ・ポドグージェ地区(クラクフゲットー)

Posted by ジャンヌ(Mami Takayama) on 07.2016 ポーランド
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クラクフのカジミェシェ(Kazimierz)地区から、ヴィスワ川を渡った南側に位置するポドグージェ(Podgórze)地区。
ここにクラクフゲットーができた。

もともとカジミェシェ地区にユダヤ人街の中心があったものの(裕福なユダヤ人たちは、ユダヤ人地区以外の他の地域に多数住んでいた)、1941年にクラクフ全体のユダヤ人は、ポドグージェ地区の狭いゲットー内に収められた。
(ワルシャワでも同じだが、その際、その地域に住んでいた非ユダヤ人は逆に他の地域に移動となる。)

労働不可能なユダヤ人(年配者、病人など)はクラクフから即絶滅収容所行き、労働可能な肉体を持ったものだけゲットー内に移動というわけだ。


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このポドグージェ地区にあるのが、映画でも有名なシンドラーのホーロー工場。
Lipowa通り4番地。
今も全く同じ場所に工場は建っている。

戦後長年他企業の工場として建物は使われていたが、映画のヒットのおかげで博物館としてリニューアルする運動が起こり、中を大改装して2010年にオープン。


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"Schindlerjuden"、英語で "Schindler's Jews"と呼ばれる、シンドラーに命を助けられた1100人の生存者たち。


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"Whoever saves one life saves the world entire."
「一人の人間の命を救う者は全世界を救う」
ユダヤ教の教えの言葉のひとつで、これはシンドラーの墓にも刻まれている。
映画の中でも出てくるように、終戦を迎えてユダヤ人たちとの別れのシーンで、彼らから贈られる金の指輪にも掘られている言葉。


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博物館は、シンドラーのことよりも、クラクフのユダヤ人の歴史、ホロコーストについての展示物が多い。


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ドイツ軍に提供するためのホーロー食器を作っていた工場。
ナチスの当院でもあるシンドラーは、「軍需工場でユダヤ人労働者をタダで使う」という大義名分を掲げうまく軍部を説得し、私財を投げ打って自分の工場で働くユダヤ人を守り切った。
生存者たちの証言のフィルムが博物館で見られるが、工場内で出される食事はちゃんとしたもので、ゲットー内の食事とは比較にならないほど栄養が摂れたという。
シンドラーは闇市で食料も調達していた。


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この工場の入り口。映画でもよく出てきてました。
シンドラーは決して誰でも助ける慈善事業をしていたわけではなく、労働力、スキルのある人を選んで雇い入れていた。それはナチスから目をつけられずに説得性を持つためでもある。生産性を上げて金を作る。その金でナチス党員たちにご馳走を振る舞い話を取り付ける。
やり手のビジネスマンだったからこそ、まとまった数のユダヤ人を公に堂々と、強制収容所へ送らせずにゲットー外で生活させることができた。
いろんな形でユダヤ人たちはポーランド人らにも助けられ生存することができたけれど、シンドラーがしたような形は例を見ない。


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ナチスが収奪したユダヤ人の所有物。
裕福なユダヤ人も多かったので、彼らはゲットーへ移動させられる時もスーツケースに沢山の銀食器や燭台、絵画、楽器、そしてダイヤモンドなど宝石も持ち込んだ。
当然ながらそれはゲットーへ入る前に収奪されるわけだが、ダイヤモンドをゲットーに隠し持つユダヤ人たちも多くいた。


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展示物は見るものも読むものも多い。
写真も多数展示されているが、つい「忘れたくない」と思って写真に撮った写真(変な言い方だが)。
正統派ユダヤ人たちは髭を生やしているが、その髭は命とも言える。ゲットーに押し込められてから、ナチスがその髭をナイフで切る光景は映画でも写真でもよく見てきた。
ここにある1枚で、髭を切られている老人がカメラに向かって笑っているのがある(上段左。見にくいけど)。カメラ(ナチス)に向かって咄嗟のこの笑顔は、「死にたくない」という命乞いの笑顔なんだろうな、と。
殺してやりたいほど憎いナチスに、怒りでも無表情でもない笑顔を向ける。屈辱でもあろうに。
心に残る表情。


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ゲットー内で暮らしていた子供達の作文が残っている。
言葉はポーランド語。5歳なのにシッカリした文字。

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これは英訳。内容もシッカリ。

心に残る作文があった。それも別の5歳の子が書いたもの。
「ゲットーには4つの大きな門がある。でも我々はそれを通ることはできない。厳しく禁止されている。3番のトラムがメインストリートを行ったり来たりするけれど、我々は乗ることができない。それも厳しく禁止されている。だからもう、トラムはゲットーに止まらなくなった。
ある日、トラムの窓から男の子が、パンのローフをいくつか、僕らの足元に投げてくれた」

おそらくパンを投げた男の子はポーランド人なのだが、彼らはユダヤ人を助けると処刑されていた。だから親切も命がけ。
しかも知らないユダヤ人にパンを投げてよこすという行為を、年端のいかない少年がする。一体どういう思いでポーランドの子供達は、ゲットーの壁やそこに押し込められている惨めなユダヤ人たちを見て過ごしていたのだろうか。
そしてこの作文を書いた少年にとっても、このことはよほど嬉しかったに違いない。


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シンドラーの工場の周辺も、中小工場地帯。

だから工場地帯にある博物館。
ここに行く時トラムに乗ったのだが、工場前にトラム駅があるわけではない。トラムの中の乗客の女性に降りる駅を告げると、「そこに着いたら教えてあげるから。シンドラーの工場に行くの?」と聞かれた。
「そうです」と答えると、女性は窓から見えてきた工場の建物を指差して、「あそこが工場だから。そこの通りをまっすぐ向こうに歩いていくのよ」と、降車の前に親切に教えてくれた。


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ゲットーがあったこの地域は、戦後開発もされていないので、戦前からの建物が残っていて独特な雰囲気。
カジミェシェ地区とは全然違う。


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残存するゲットーの壁。
ワルシャワゲットーはレンガ壁だったが、クラクフはコンクリート。

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元ゲットー内にある、Zgody広場(Plac Zgody)。
各強制収容所に移送されるユダヤ人の集合場所に使われた。ここでユダヤ人の家族が引き裂かれ、抵抗するものは暴行され、殺害された。

今は椅子のモニュメントがある。
子供達がゲットーに移送される時、学校から自分の椅子を各自運んでここに持ってきたことに由来する。
また、ユダ人が家から持ち運んだ家具類はゲットーに入る前に制限され、ここに散乱していたから、という意味もある。


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この広場の前にはバス停があり、この椅子に座って待つこともできる。
ユダヤ人に限らず、「誰でもいつでも犠牲者になりうる」という意味合いも込められている。


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写真の左奥、薄ピンクの建物は、イーグル薬局の建物。
この薬局は100年ほど前ユゼフ・パンキェヴィチというポーランド人が創業し、その後、息子のタデウシュが後を継いだ。1941年3月にドイツ軍がポドグージェ地区に ゲットーを設置し、この薬局はゲットーの敷地内になってしまった。ナチスはパンキェヴィチにゲットーの外に移動して営業するように言ったが彼は断り、同じ場所で営業を続ける。ゲットー内にある唯一の薬局であり、彼がゲットー内のただ一人のポーランド人だった。
パンキェヴィチは「シンドラーのリスト」でも登場する。広場に集められた怪我人のユダヤ人を助けようとするのも彼だし、ナチスが彼の病院内に来て「労働力にならない」入院患者から殺害することを知った時に、毒を医者に渡して患者に飲ませ、銃殺の前に息を引き取らせたのも彼。
映画のヒット後スピルバーグ監督が寄付金を出し、この薬局は修復保存される運びとなり、現在は博物館となっている。


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この広場近くの壁に、反ユダヤ主義のマーク。
わざわざここに足を運ぶヘイターがいるってことですねえ。

何事も、賛同者と反対者、支持者と妨害者はバランスよく存在しないと健全ではないと思う。やみくもな愛情や崇拝は憎悪と同じくらい危険だし、嫌悪や憎悪にも理由がある。
ユダヤ人が嫌われるわけもわかるし、好きも嫌いも自由。
人間は、近づきすぎるほどコミットすればするほど、知れば知るほど、憎む要素も増えていく生き物だ。
誰からも適当な距離を置いて生活できるなら、人は憎悪という感情を持たずに済むのだろうけれど、そうはいかない。憎悪も、人間が持つことを許された感情だと思う。それをどうコントロールするか、そこが試されるところなのだが。


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いろいろと盛りだくさんのこの街。クラクフ日記、まだ続きます〜




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