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「そこのみて光り輝く」

Posted by ジャンヌ(Mami Takayama) on 23.2017 映画&ドラマよもやま話
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久々に心をえぐられる映画だった。
近年の日本の芸能界に疎い私であるが、去年の秋頃に「菅田将暉という若手俳優がいい」、というのを耳にし、こちらで手に入る彼の出演作はなんとかして観てきた。
「セトウツミ」で感心し、「ディストラクションベイビーズ」で唸らされ、「共喰い」で圧倒され、「海月姫」ではあまりの「女っぷり」に驚かされた。菅田将暉の天才的な魅力を書くつもりでいたら、「そこのみて光り輝く」に出会った。
菅田くんの凄さはここでも炸裂しているけれど、綾野剛も池脇千鶴もいいし、映画全体がよくできている。
なんと佐藤泰志原作の映画ではないか。佐藤泰志は41歳で自殺した、亡くなってからもしばらく無名だった作家だが、『海炭市叙景』を読んでいいなあ、と思い、その映画もこれまたよかった。「ここのみて光り輝く」も彼の「函館三部作」と言われるもののうちの一つ。
函館出身の作家の作品だけあって、函館の情景がとてもリアル。海辺の町の、貧困層の暮らし。社会の底辺でなんとか生きる、行き場のない若者たち。そこではそれが当たり前の光景だからこその、静かな描写がかえって胸にグッとくる。

この作品は小説をまだ読んでいない。だから映像の方が先に焼き付いてしまったが、こんなにワンシーンワンシーンが見終わってから心に残る作品も珍しい。どれも綺麗な場面ではないし、だからと言って暴力シーンと血生臭で映像に訴える方法を狙っている場面なんて一つもない。
初っ端のパチンコ店内で達夫(綾野剛)と拓児(菅田将暉)が出会うシーン。ライター一つのやり取りで、こんなにも「拓児」を表現できる菅田将暉。
二人が拓児の家まで移動するシーン。自転車に乗った拓児だけがほとんど喋り捲る。対照的な受け身の達夫。
海辺のバラックの拓児の家に招かれ、拓児のお姉さん(家脇千鶴)に作らせたチャーハンを二人で食べるまでのシーン。
後ろ姿でご飯を作る千夏(池脇千鶴)がフライパンを操る時に、左腕の腕の肉が揺れるのだが、その肉感的な存在感。彼女は映画を通して、肉体で貧しい哀しさを表現している。そして寂れた町の貧困社会において、その肉体がいかに秀でたものであるかも物語っていてそれがまた悲しい。

肉体でいうならば、男性陣の綾野剛と菅田将暉の肉体も美しい。
映画の始まりは、畳の上でうつ伏せで寝ている男性の足元のシーンから始まる。足裏からカメラが上に向かいふくらはぎ、太もも、お尻、背中へと這うように動く。綾野剛演じる達夫は元の職場で後輩を事故で死なせる。その責任を感じて自暴自棄になっている無職の青年だ。ビールの空き缶などが転がる畳の上で、うっすらと汗をかいているその肉体がとても艶かしくリアルである。肉体というのは恐ろしいほどリアルに、その人の生活や人生を映し出す。貧乏人は安っぽくて汗臭い服装で貧乏をよそえるし、金持ちはブランド物で金持ちをよそえる。それが服の役割だが、服をはいだ生身の肉体はそれを隠せない。そう、どんなに社会から落ちぶれていようが、若者は美しい肉体を持つ。自分が意識せずとも、勝手に綺麗になっていく若い肉体。どんなに不摂生しようが、ある年齢までは、肌も筋肉も綺麗なのが若さの象徴だ。そのリアルさが、裸の綾野剛の肉体に現れている。最初のワンシーンで、これは落ちぶれた中年の映画ではなく(笑)、訳ありで無職の若き青年の話なのだ、という説明がつくのだ。肉体一つで10のセリフの役目を果たす。それにしても、元陸上部だという綾野剛の肉体の贅肉のなさはとても美しい。
そして本当に社会の底辺での暮らししか知らない拓児(菅田将暉)の、さらに若き肉体も映画で存分に動き回る。パチンコ店で、達夫にライターを借りる時に伸ばす、贅肉のない体のしなやかさ。狭苦しい自宅の食卓で、長い足を邪魔くさそうに折り曲げて食べる仕草。タンクトップから出た、若さゆえのまだ細い肩や長い腕。彼の肉体が物語るように、彼は持て余しているのだ、今おかれている状況で自分を。拓児の、行き場所のない歯がゆさを、菅田将暉の美しい肉体は素晴らしく表現していて、美しいが故に悲しくなるのだ。

始終暗い表情の達夫(綾野剛)を勝手に兄のように慕い、どこまでも付いてくる迷い犬のような拓児(菅田将暉)。達夫が以前働いていた山に一緒に戻って仕事をしたいと言い出す。
この人懐こさは下手すれば嘘くさくなるのだが、仮出所中の身であり友達のいない拓児の状況や、働き口があるのなら働きたくてしょうがない(怠けて仕事をしているわけではない)、姉や両親(父親な病気)の拓児の切羽詰まった環境からして、嘘くさいどころかどれも納得がいき、その人懐こささえ痛々しくて愛おしくなる。それが実に上手いのだ、菅田将暉くん。

心を通い始めた達夫と自分の姉、千夏の喧嘩を拓児が取りもち、食堂で3人が集まるシーン。
安食堂の小さなテーブルで、拓児が言う、「達夫、かんぱーい」「姉ちゃんかんぱーい」。泣けます。名場面の一つ。
チャラいのに感動させる演技をさせたら、今菅田くんの右に出るものはいないであろう。

拓児の天使ぶりを見ていると、映画の途中から「拓児は死んじゃうんだろうなあ」ってわかり始める。
佐藤泰志の作品ですから、ハッピーエンドなんてない、と思ってしまう(苦笑)。やだなあ、菅田ちゃんが死ぬの、見たくないなあ。。。。
って思ってしまう。でも避けられないだろうなあ、って。
結末からいえば、拓児は死なない。だが、姉のしつこい不倫の相手をふとしたことから刺してしまい、達夫と一緒に山へ仕事に行くという掴みかけていた幸せを手に入れずにシャバを再び去る運命になる。
殺人ではなく傷害事件なんだからまだいいや、と思えるし、拓児も生きてるんだからいいじゃないか、と思いたいが、貧しさから抜け出したかった青年が逆戻りしてしまうという、やはりそこは叶わない夢なのか、と思われる現実の厳しさがやりきれない。
傷害事件を犯した後に、達夫のアパートの前に座り込んでいた拓児。達夫に殴られる拓児。そして二人でタバコを吸い、「これがクライマックスだよ」と観客が期待するシーン。どういうセリフが出てくるのか。誰もが期待する。
少し間があるので、「こういうセリフが出てくるんだろうな」と私も予想する。予想してたし、だいたいその通りのセリフだったのだが、実際に菅田将暉の口からそれが出てきたときは、ブワッと涙が出てきた。
一体なんなんじゃ?この役者は。。。? 恐ろしいわ、菅田将暉。

「そこのみて光り輝く」の映画の感想というよりも、菅田将暉くん大好き論みたいな記事になりましたが、最初は菅田将暉の魅力についてとっぷり語ろうと思ってた矢先だったのでご勘弁を(笑)。
いやー、いい映画でしたよ。キャスティングはバッチリでございます。
綾野剛は、こういう受け身受け身の役柄の方が魅力をより発揮できる。ただ、こんな役ばかりだとあまりに狭まってつまらなくなるのも確かだが。
菅田将暉がやった拓児役を、池松壮亮がやったらどうなるか、ってちょっと考えてみた。タイプは違うけれど、彼がやっても全然違う拓児が出来上がっただろうな。彼なりに、拓児像を作り上げてしまうだろうし。
だがこれは、菅田将暉で本当によかった。役者は、経験と年齢を重ねて深みを増し、どんどんよくなってもいく職業である。しかし、最初に書いたように、スクリーンにバーンと映し出される肉体(肉)というのは嘘をつけない。演技以前の問題でもあるが、肉体も演技の表現手段の武器なのだ。
菅田くんの、低い天井の自宅の中で狭苦しそうに立つ姿。冷蔵庫を開けてビールを取り出す姿。ママチャリを、長い足をもてあますようにこぐ姿。そして、「達夫ー。達夫ー。」って呼ぶあの声。
ああやっぱり、拓児は菅田くんしかいないな。

最後にもう一つ菅田くんを褒めると、彼の演技の素晴らしさの一つは「反射神経」。相手役の役者の演技やセリフや動作に対しての反射。これが抜群にうまい。
覚えたセリフで練習して何テイク取ってるにも関わらず、どれもこれもがまるで初めて出っくわすシーンのように彼は演技し続ける。何度も繰り返すと嘘くさくなるし自分でも飽きてくるだろうけれど、きっと彼は引き出しをたくさん持っている人なんだろうなあ。この「反射神経」の素晴らしさは、彼のどの作品を見てもお目にかかれる。
時にプッと吹き出してしまうし、時にウルウルしてしまう。相手役も上手くないと菅田くんの魅力は100%生かされないので、同レベルで張れる役者さんとの共演、今後も楽しみ。
池松壮亮にしても菅田将暉にしても、こんなに上手い20代の役者たちが出てくると、いい意味で恐ろしいね。

ブレイクしてから随分と時間が経っているのでしょうが、今頃気づいた菅田将暉という俳優。ああ、知ってよかった。
安売りせずに、溢れる感性を大切にしながら成長していってほしいものです(やっぱ最後は菅田くんへの想いになりました笑)


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最近のメニューは、タルトタタンビーフシチューチョコレートディップ付きアーモンドビスコッティオレンジシフォンケーキなどなど!



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