「ムーンライト」

Posted by ジャンヌ(Mami Takayama) on 28.2017 映画よもやま話
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今年のオスカーにノミネートされていた作品の中で、飛び抜けて気に入った作品が「ムーンライト」だった。低予算の小作品だしテーマがテーマなので、正直これがノミネートされたことに驚きだった。

いい作品かどうかは人によって違うが、自分が好きになる映画は小説と似ている。小説は最初の1ページで引き込まれるかどうかが決まるように、映画は最初の1分で好みの映画かどうかがわかる。
「ムーンライト」は、まさに始まりの何気ないシーンから、「あ、これは面白いぞ」と妙に私をワクワクさせた作品だった。どういう話かどうかも全く耳に挟まないで観始めたのに、「出会い」というものはそういうものだ。

舞台はマイアミ。黒人の一少年シャイロンの成長物語とも言える。シングルマザーの家庭で母一人子一人。母はドラッグ中毒。彼は体が小さいこともあり性格が大人しいこともあり、学校ではいじめられっ子だ。そんな中で唯一彼に話しかけてくれる友達ケヴィンができる。
少年、ティーンエイジャーと成長するにつれて、シャイロンはケヴィンに対して友達以上の気持ちを抱き始め、自分の性のアイデンティティについて模索し始める。

すごく美しいラブストーリーだと思った。
ラブストーリーというのは男と女のものだけではないのは当たり前だが、男同士の切ない想いも男女となんら差もないということに改めて気付かされる。
低予算とは言え、映像がいい。第3章でシャーロンがケヴィンが再開するダイナーのシーンはドアのベルが鳴る場面から最後のドアベルが鳴る場面まで通しで大好きだ。
シャイロンがケヴィンのアパートに行き、駐車場から見える海を見る。夜の波が見える。そんな小さなシーンがいちいち秀逸で、制作側のおとなしくも細やかなセンスに恐れ入る。

大掛かりで大予算をかけた他のノミネート作品と比較してしまうが、いい作品って本当にお金じゃないんだよ、心なんだよ、と思ってしまう。興行成績も他作品と比べると結果も出していないこの小作品が作品賞を取るなんて、痛快である。アカデミーも変わったなあ。
変わったなあ、と思うのはもう一つ。今までゲイ映画は数あれど、ゲイ映画は絶対に最優秀作品賞は取れない、という暗黙のお決まりがあった。黒人俳優や監督が賞を取れるようになってからも日が浅い。やっと人種の壁を超え始めた時代だから、同性愛ものはまだその先。私の中での作品賞は絶対に「ムーンライト」だったが、マイノリティのゲイ映画とあって2つのハードルがあり、しょうがないが「ラ・ラ・ランド」に持っていかれるのがオチだろうと思っていた。
だが、堂々と、興行成績も無視してこの「ムーンライト」が評価された。これは画期的なこと。
2005年に素晴らしい映画、「ブロークバックマウンテン」があった。だけどゲイの西部劇ということで、作品賞からは外れて当然の空気があった。
あれから12年。あー、世の中変わったなあ。
ただ、いい作品が評価されて欲しいのだが、ちゃんといい作品が評価された今年のオスカー。心から嬉しい。

「ムーンライト」のダイナーのシーンで、ケヴィンがシャイロンにキューバ料理を作ってあげる。そこまでの話のくだりがいいので、そのシーンにはじんとくる。
そのシーンに感激した私は、オスカーの夜はケヴィンが作ったキューバ料理を真似して作って臨んだ(笑)
ケヴィンが作ったものより時間もかけて洗練されておりまする、キューバ風チキンの煮込みとブラックビーンズ
ケヴィンの出すチキンはただ焼いてましたが(ダイナー料理だからね)、私は煮込みました。
キューバ移民の多いマイアミ。マイアミの潮の匂いがするようなキューバ料理です。


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最近のメニューは、きな粉黒ごまクッキーオランジェットミネストローネ抹茶ラテチョコレートクリームパイピリ辛海老入りクスクスチキンヌードルスープシュリンプ・ポーボーイサンドイッチキューバ風チキンの煮込みとブラックビーンズなどなど!




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